国内

明仁天皇と昭和天皇の最大の違い おことば収録本の著者考察

 今年1月1日の年頭挨拶、天皇はこう述べた。

「本年は終戦から70年という節目の年に当たります」
 
「この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」
 
「象徴天皇」という制約のもと、政治的言動の許されない天皇が、「満州事変」という具体的な外交事変の名を口にしたのは異例である。1931年、本国の指令を聞かずに暴走した関東軍は南満州鉄道を爆破、中国側の破壊工作だと発表して軍事行動に移った。
 
「この事変をきっかけに日本は戦争への道を進みはじめる。軍部の暴走に、政府は、そして憲法はいかにストップをかけられるか──国の“ありかた”を考える上で、満州事変は戦前の大きな反省であり、戦後乗り越えるべき課題でもある。わざわざ具体名まで口にしたのは、日本がいま危険な方向に向かいつつある、との警鐘だと私は思いました」
 
 そう語るのは、今上天皇の「おことば」を収録した『戦争をしない国 明仁天皇メッセージ』(小学館刊)を6月30日に上梓する矢部宏治氏である。
 
「私は天皇という立場にある方の言葉だから、『聞いてほしい』というわけではありません。ひとりの知識人、思索と行動を兼ね備えた尊敬できる方の言葉だから、もっと知ってほしい、と思ってこの本を書きました」
 
 同書は、“声なき人々”の苦しみに寄り添いながら、天皇が折々に発した29のおことばを、写真家・須田慎太郎氏の写真とともに紹介している。須田氏は、天皇の訪れたサイパン、パラオ、沖縄、広島、福島に赴き、その足跡を辿った。そこから浮かび上がってきたのは平和への切なる思いを抱きながら、象徴天皇のあるべき姿を体現しようと努める天皇の固い意思だった。冒頭に紹介した年頭挨拶も、その思いが貫かれた言葉の一つだ。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン