「最近よく聞かれるんですが、私は彼らがたまたまウチのOBだったというだけで特別何か原因があったとは思わないんです。確かに部ではバットを振り込んだり、振り切ったりという練習はやっています。当てにいくよりしっかり振り切るほうが、相手ピッチャーにとってはイヤなものですからね。
ただ、あくまで高校レベルの指導だから、これがプロに行っていきなりどうこうというのはおこがましい。現在のOBの活躍は彼ら自身の努力、それに球団の育成があってこそだと思っていますよ」
西谷監督はそう謙遜するが、同校の指導方針を見ていると、OBたちの“マン振り活躍”の理由が見えてくる。
大阪桐蔭では、第一に選手の自主性を重んじる。型にはめられることはなく、細かい打撃指導などは行なわれない。高校通算55本塁打を放ち、社会人を経て2000年に西武入団、4球団で13年間プレーした後、現在はトムス野球塾を経営する水田圭介氏はこう証言する。
「構えがどうの、タイミングがどうのといった指導はありませんでしたね。打順や体格も関係なく振り切ることだけ重視させられました。そのためか、スランプに陥っても1本出ると体が思い出して、立て続けにヒットが出るということがあった。他のチームメートも同じ感覚を持っていたように思います」
2005年の夏の甲子園で156キロを出して注目され、ドラフト1位で巨人に入団した辻内崇伸氏(現在は女子プロ野球・埼玉アストライアの投手コーチ)も頷く。
「フォーム指導はありません。同級生の平田は皆に“ヘンな打ち方やな”ってからかわれていましたが、監督はそれを矯正せず、持っているものを磨くというやり方だった。それで平田は1年からレギュラーを獲っていた。僕が3年の時の新入生だった中田は、平田のバッティングを真似していましたね。今も手首を返すのは平田の影響です。もちろん監督には文句をいわれませんでした」
※週刊ポスト2015年8月7日号