スポーツ

PL学園黄金期築いた「付け人」制度 立浪和義氏は生ける伝説

 夏の甲子園が6日、開幕した。かつての名門校の思い出話、野球の見方を、伝説の名コーチが語る。(取材・文=フリーライター神田憲行)

 * * *
 今夏、ある名門校の地方大会の戦いぶりが注目を集めていた。PL学園である。新入部員の募集を停止し、2、3年生だけで臨んだこの夏は、大阪大会準々決勝で終わった。新チームは3年生部員だけ12人だけで甲子園に挑むことになる。

「厳しいのはわかってる。でも与えられた状況のなかであの子らがやるしかないんです。野球部が存続するのかしないのかはわからん。でも目の前のやれることをやるのが大事」

 とエールを贈るのが、かつて同校で野球部コーチをしていた清水孝悦さんだ。

 清水さんはKKコンビの1学年上としてPL野球部に所属し、3年生時はキャプテンとして春夏の甲子園に出場、夏は取手二高に敗れたものの、準優勝を果たした。

 その後大学に通いながら野球部のお手伝いを始め、昭和63年から平成14年までコーチを務めた。その間に教えたプロ野球の現役選手は、松井稼頭央、福留孝介、今江敏晃がいる。

 PL学園野球部が現在のような状態に追い込まれた原因のひとつに、不祥事の多さがある。その「温床」のように指摘されたのが、野球部独特の「付け人」制度だ。

 「付け人」は3年生部員ひとりひとりに、下級生がついて、洗濯・食事の用意・自主練習のお手伝いなど身の回りの世話をする。文字通り寝る暇もないほど「仕事」に追い回されるが、清水さんは「それが野球部を強くした」という想いが強い。

--「付け人」なんですが、清原和博と桑田真澄も付け人としてやっていたんですか。

清水「やってましたよ。ただあの2人は1年生のときから試合に出て、(ベンチ入りする)メンバーに選ばれたから、『仕事』も軽減されてました。そのぶん他の1年生の子が大変やったと思うわ」

--どんな付け人だったんでしょう。

清水「桑田は一切怒られたことがない。時間は守るし、相手によって対応変える器用さもあったので、そういう意味ではうまかった。清原はある意味で素直というか、嫌なことがあったら顔とか態度に出てしまうから、注意されることもありましたね」

--今の2人の印象とあんまり変わらない気が……。

清水「そやねん(笑)」

--そもそもなんで、「付け人」制度が必要なんでしょうか。野球に関係があるんでしょうか。

清水「あります。付け人というのは、付いた上級生の考えを先回りして、仕事をしていくことが大事になります。『あの人、いまこんなことしてほしいんとちゃうかな』とか、中学を出たばかりの子が、人のために働く。これがチームワークの元になるんですわ。キャッチボールやったときも、上級生は極端に言うたら胸の辺りに投げないとボールを取らない。相手が取りやすいところに投げる、こうしたらこの選手が動きやすい、そんなことを日常的に考える基礎になるんです。

 たとえば桑田はピッチャーゴロが飛んできて、自分が取らずに二塁手が取った方がダブルプレー取りやすいなと思ったら、伸ばした自分のグラブをわざと引っ込める。自分のバックの守備位置が全部頭の中に入ってないと出来無いプレーです。そういう『先読み』する感覚が養われます。

 また自主練習してるときも、自分がトスバッティングで100球打ったら、ボール投げてくれる付け人に『お前も打ってみぃ』と交代したりとか、後輩を可愛がる習慣もできます。上級生は『俺の付け人は気合い入っとるで』とか、自慢したりね」

--その「気合いの入った付け人」で覚えている選手はいますか。

清水「(間髪入れずに)立浪和義。僕が大学生のとき教えに行ったら、1年生で『付け人の立浪です。ユニフォーム洗わせていただきます』とか、完璧やった。あの子に比べられる子はいてへんのとちゃうかな。僕の『系列』やったしね」

関連記事

トピックス

緊急入院していた木村文乃(時事通信フォト)
《女優・木村文乃(37)が緊急入院》フジ初主演ドラマの撮影延期…過密スケジュールのなかイベント急きょ欠席 所属事務所は「入院は事実です」
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
《豊田市19歳女性刺殺》「家族に紹介するほど自慢の彼女だったのに…」安藤陸人容疑者の祖母が30分間悲しみの激白「バイト先のスーパーで千愛礼さんと一緒だった」
NEWSポストセブン
女子児童の下着を撮影した動画をSNSで共有したとして逮捕された小瀬村史也容疑者
「『アニメなんか観てたら犯罪者になるぞ』と笑って酷い揶揄を…」“教師盗撮グループ”の小瀬村史也容疑者の“意外な素顔”「“ザ”がつく陽キャラでサッカー少年」【エリート男子校同級生証言】
NEWSポストセブン
2023年7月から『スシロー』のCMに出演していた笑福亭鶴瓶
《スシローCMから消えた笑福亭鶴瓶》「広告契約は6月末で満了」中居正広氏の「BBQパーティー」余波で受けた“屈辱の広告写真削除”から5カ月、激怒の契約更新拒否
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長》東洋大卒記者が卒業証明書を取ってみると…「ものの30分で受け取れた」「代理人でも申請可能」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
《フジテレビに蔓延するオンカジ問題》「死ぬ、というかもう死んでる」1億円以上をベットした敏腕プロデューサー逮捕で関係する局員らが戦々恐々 「SNS全削除」の社員も
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
《新歓では「ほうれん草ゲーム」にノリノリ》悠仁さま“サークル掛け持ち”のキャンパスライフ サークル側は「悠仁さま抜きのLINEグループ」などで配慮
週刊ポスト
70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン