「系列」とは、付け人の系譜のことである。しばしば大物プロ野球選手の「誰それさんの系列」という言い方をする。たとえば清水さんは、元阪神タイガースの木戸克彦の系列である。ということは木戸と立浪がPL学園のなかでも1本の人脈でさらにつながることになる。
清水「系列は寮生活をさらに濃いものにします。この間も昔の教え子等が飲み会に呼んでくれたんですが、10学年ぐらい離れている者が30人くらい集まった。全然学年が被ってない者同士でも、同じ寮で過ごしていたというだけで打ち解ける。それがPL野球部の結束の強さやね。甲子園の思い出話なんかせえへん。寮の話ばっかりですわ」
--教え子で「凄いな」と思った選手は。
清水「福留。バットをボールに当てる角度が素晴らしく、練習への集中力も高かった。教え子でなくて後輩でいえば、やはり清原になる。僕が2年生のとき入学してきた清原の打撃練習みて、『こいつホームラン打つために生まれてきた』と思ったもん」
--コーチとして、なにを大事に教えていましたか。
清水「とにかくその子のエエところを探すことです。厳しくダメだしさえしていればいいというもんじゃないんです。僕が現役のとき、臨時コーチの人から『お前ようそんなんでバットにボールが当たるな、普通は打てへんぞ。ある意味でセンスがいいんやから、もっと練習したらもっと打てるようになるぞ』と言われて嬉しかった。だから指導のときもよくそういうてました」
清水さんはPL対横浜の「延長17回」の死闘でも、コーチして関わっていた。横浜の名参謀と言われた小倉清一郎部長(当時)が「あの試合は俺と清水の戦いでもあった」と、筆者に述懐したことがある。
清水「僕は松坂大輔投手を研究すればするほど、惚れてしまいました」
--ボールの速さ、スライダーのキレ……。
清水「違います。3つ目のアウトとるときのマウンドの振る舞いですわ。簡単なフライが上がると、捕るのも確認せずにチェンジやいうてマウンドから降りてしまう投手が多いんですよ。でも松坂はしっかり野手のグラブにボールが収まるところまで見届けてから、マウンドを降りる。投手としての責任感、野手とのチームワークを重視していることがわかり、なんて素晴らしい投手なんだろうと思いましたよ。いま甲子園やってますが、『3つ目のアウト』のときの投手の振る舞いを是非確認してほしいですね」
清水さんは最後に、12人になってしまったPL学園野球部の後輩たちにあらためて檄を飛ばした。
「PLのユニフォームを着た以上、負けたらアカン。それだけです」