国内

外国人家政婦解禁 日本人の「後ろめたさ」が透けて見える

 外国人労働者による家事代行サービス、いわゆる外国人家政婦が年内にも一部地域で解禁される。なぜ日本人家政婦ではなく外国人にニーズがあるのか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。

 * * *
 私は株をやらないが、株のニュースならたまに見る。世の中の流れのちょっとした変化を、そこから覗けることがあるからだ。

 8月27日の夕刻に気づいたのは、「株探」という株式情報サイトが同日昼過ぎに報じていたこんな市場ニュースだ。

〈ダスキン<4665>やパソナグループ<2168>が高い。27日付の日本経済新聞は、「政府が国家戦略特区の大阪府と神奈川県で外国人を使った家事代行サービスを年内に解禁するのに応じ、ダスキンやパソナが同サービスに乗り出す」と報じた。この日は両社の事業拡大に期待する買いが流入した。また、ダスキンの代理店を行っているナック<9788>も買われた〉

 上記3社の株価チャートをチェックすると、午後になっても下がることなく、いわゆる急伸。その要因となった日本経済新聞のニュースは、ネットで同日午前2時に配信されていたのだが、記事中にはこうあった。

〈これまで日本で家事代行サービスに就けた外国人は日本人と結婚するなど在留資格を持っている人に限られていた。今回、対象が大幅に広がることで外国人によるサービスが定着すれば、より需要が大きい東京都などにも広がる可能性が高い。政府は全国に広げることも視野に入れている〉

 これまでの日本の法律では、外国人を家事使用人として雇うことができるのは、外交官や年収1500万円の企業幹部など「高度人材」として認められた外国人のみだった。つまり、金持ち在日外国人なら出稼ぎ外国人を家政婦にしてもいい、という特殊な世界のお話だったのである。実際には、金持ち同士のコネなどで紹介してもらった外国人家政婦を使っている日本人もいるそうだが、法律的には一応ペケだ。

 それが安倍政権の経済活性化政策の一つとして、実験的に大阪府と神奈川県で解禁されることになった。まだその段階なのだが、関連株がワッと上がるなど、〈需要が大きい〉ようだ。また、日経新聞の記事はこんな情報も載せていた。

〈家事代行大手のベアーズ(東京・中央)は第1弾としてフィリピン人など10人弱を受け入れ、神奈川県と大阪府で事業を展開する。年内に立ち上げるフィリピンの現地法人で採用や研修事業を手がけ、先手を打つ。パソナグループ子会社のパソナライフケア(東京・千代田)はフィリピンの人材大手マグサイサイグローバルの研修を受けた人材を約50人採用する〉

 そう、家政婦と言ったらフィリピン人なのだ。中国の富裕層の間では大卒で英語を話すフィリピン人家政婦を雇うことがステイタスらしいし、遠くヨーロッパにもフィリピン人家政婦が多く、彼女らはみんな「エリザベス」と呼ばれているという都市伝説みたいな話もある。日本でもすでに、永住権のあるフィリピン人女性を家事代行サービス要員として雇っている家事代行会社がいくつかある。

 なぜフィリピン人なのか? 母国が家政婦大国であり、家事代行の技術水準が高いからだとよく説明される。母国が国策として出稼ぎ家政婦を育成しているとも聞く。フィリピン人は英語ができる人が多いので、グローバルエリートの世界では重宝されるという声もある。フィリピンは植民地時代が長かった国だからメイドシステムが発達したのであろうと私は想像するのだが、イメージが悪くなるからか、家事代行業界付近でそういう説は拾えない。ま、家政婦やメイドは奴隷とは違う、一つの立派な職業であるとは思うけれど。

 けれど、私はこの手の話にもやもやとしたものを感じるのだ。家政婦というとなぜすぐフィリピン人なのか。フィリピン人でなくても、なぜ先進国入りしていない東南アジア諸国の労働力をすぐ期待するのか。

 自分のうち(国)の家事ぐらい、自分(自国民)でどうにかしろよ、と私は思うのだが、それってグローバル化した社会では時代遅れの考え方なのだろうか。

関連記事

トピックス

今季6勝目をかけたアストロズ戦に挑む(Getty Images)
投手・大谷翔平に立ちはだかる宿敵アストロズの強力打線 MLB評論家・福島良一氏が勝負のポイントを解説
NEWSポストセブン
松本人志に相手にされる芸人と、相手にされない芸人の差はどこにあるのか
松本人志に噛みつくお笑い芸人 反応してもらえる中田敦彦とスルーされる村本大輔の違い
NEWSポストセブン
天海祐希
天海祐希“何度目かの大ブーム”が到来中 ナイスキャプテンシーな言動による伝説の数々
女性セブン
安藤サクラ(写真/GettyImages)
カンヌ国際映画祭2023のレッドカーペットに登場したセレブたちの豪華絢爛ドレス姿ショット
女性セブン
2017年「侍ジャパン」の新ユニフォームを披露した筒香(時事通信フォト)
《元侍ジャパン主砲》筒香嘉智、現在の姿に衝撃走る かつては「牛のように食べる子供だった」男が激痩せする理由
NEWSポストセブン
芸能界追放危機の木下ほうか
《女優への性加害報道》木下ほうか、550万円損害賠償訴訟を取り下げていた 「法廷の場で明らかにさせていただく」から一転
NEWSポストセブン
猿之助の両親の死因は向精神薬の摂取による中毒死とされている
市川猿之助が“遺書”で宛てた付き人兼俳優 騒動後も平然と明治座に現れる姿に「恐ろしく精神の強い人」の声
女性セブン
元タレント・上岡龍太郎さん(2000年3月撮影、時事通信フォト)
《逝去》上岡龍太郎さん、58歳で潔く芸能界を退いた“男の美学”「僕の芸が通用するのは20世紀まで」「老いさらばえた姿を見せたくない」
NEWSポストセブン
羽生
羽生結弦、あふれる地元愛 仙台市内のマンション最上階2部屋を2億円で購入 父の退職を機に家族で転居
女性セブン
2010年、外国人記者クラブで会見するリナ氏。当時はプラダジャパンで部長を務めていた(写真/AFP=時事)
「ピンクの猫好きプリンセス」返金トラブルの高級スクール創立者、家賃滞納の裏で「ビバリーヒルズ移転」「16歳の息子に代表交代」
NEWSポストセブン
京香の愛犬を散歩させる長谷川博己
長谷川博己、体調不良で降板の鈴木京香の自宅に通う日々“ほぼ同棲状態”で京香の愛犬を散歩する姿も
女性セブン
横浜地裁
「陰毛を剃るためのカミソリも持参」懲役30年を求刑された横浜・5人連続レイプ魔の“鬼畜過ぎる”計画性
NEWSポストセブン