芸能

タモリを見てしまう理由 笑いに必死の風潮の中「変わらない」

タモリは「変わらない」が強さの秘密

『笑っていいとも!』が終わってから、どうしてもこの人のことが気になってしまう。タモリのことだ。『ヨルタモリ』の番組終了発表以降、残念がる声が大きく広がっている。これだけ『ヨルタモリ』が愛された秘密はどこにあるのだろうか? そして、われわれが、タモリの番組を見てしまうのはなぜか? コラムニストのペリー荻野さんが綴る。

 * * *
 そんなわけで、9月での番組終了が発表された『ヨルタモリ』。最近のフジテレビの中で、深夜帯にも関わらず、平均視聴率が8.6%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)を記録した『ヨルタモリ』をなぜ終わらせるのか。各方面から怒りにも似た、惜しむ声が噴出している。

 しかし、考えてみれば最近のフジの番組でこれほどぜいたくな番組は他にないのである。舞台は湯島にあるという静かなバー「ホワイトレインボー」。ママは宮沢りえである。ご近所さんのエッセイストの能町みね子や音楽家大友良英、ヒャダインらが洒落たカクテルなどを飲んでると、そこにゲストがふらりとやってくる。

 井上陽水、マツコ・デラックス、桃井かおり、松本幸四郎、三谷幸喜などなど。ものすごく豪華な顔ぶれなのである。そこに現れるタモリは、「岩手のジャズ喫茶マスターの吉原さん」はじめ、工務店の社長や謎の外国人など、毎回、カツラや服装で別人になって登場。ゲストに好き放題な質問を投げかける。デビュー25周年の福山雅治に、「(同じく25周年で先にブレイクした)BEGINは嫌いでしょ?」と聞けるのは、別人タモリ以外にはいない。そして、それをまじめに受けた福山に「嫌いというより、自分に対しての失望が大きかった」と応えさせられるのも、この番組以外にはありえない。

 当然のごとくエロトークも出てくるが、これもギリギリ下品になる寸止め言葉のやりとりになる。基準はママが扇子で口を隠しながら笑いをこらえ、時々会話に入ってくる程度。このさじ加減を図りながらのエロは、高度な芸だ。

 気が乗れば、ゲストとのセッションも繰り広げられる。ママが大ファンで、店に入ってきた瞬間、薔薇柄の着物姿で「うれしい」とピョンピョン飛び跳ねた甲本ヒロトの回では、フラメンコギタリスト沖仁×甲本×吉原さんタモリのセッションを聞いて、ママは感動のあまり涙を流していた。『ヨルタモリ』が心地いいのは、ざっくばらんに見せながら、別人タモリもゲストもどこかでママを喜ばせたい、笑わせたいという心配り、サービス精神があるからだ。視聴者はその心配りをママ経由で感じ取り、心をくすぐられる。しかもそのサービスを提供しているのは、一流の芸能人。これが心地よくないはずがない。高視聴率もうなずける。

 タモリのもうひとつの人気番組『ブラタモリ』では、自ら大好きな鉄道や古地図を基に興味の赴くままにディープな街歩きを続ける。司会をする『ミュージックステーション』『タモリ倶楽部』、進行役の『世にも奇妙な物語』は、長寿番組だ。タモリの強さはどこにあるのか。

 それは変わらないことだ。かつてタモリは過激な芸を見せる芸人に「ぼくらのときには、芸人がバンジージャンプするなんてなかったから」と語っていた。「笑いをとる」という言葉が一般化し、誰もがテレビの中で笑いをとろうと必死になっている中、タモリは平然と同じテンションを保ち続けた。

 めったに取材を受けないご本人に、私は一度だけインタビューした経験がある。その時、印象的だったのは「反省しない」と言う言葉だ。反省して自分を変える気持ちなどサラサラないという不敵な発言なのか、それとも深いところを見せないカモフラージュなのか。なかなかしっぽはつかませてくれない。でも、それでもいい。視聴者は好きなことをしているタモリを見ているのが、一番楽しいんだから。

関連記事

トピックス

永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン