なにしろ六代目山口組は、是が非でもトップの親分を守り抜かねばならない。組織の司令塔である若頭が恐喝事件で収監中で、ナンバー2に加えてトップまで収監されれば痛手は計り知れない。どんな嫌疑であっても司組長を逮捕・拘束されるわけにはいかない。
かつての子分に足を引っ張られるのはトップだけではない。幹部クラスに関する密告は警察に大量に寄せられている。暴力団抗争に絡む殺人事件では、かつては一人殺しても「おつとめ」をすませて出所すれば組織内で出世できた。
だが、一人の殺人でも量刑基準が無期懲役となった現在、事件の真犯人は出頭しないのがヤクザのセオリーだ。殺人の時効も撤廃された。つまり警察の捜査をすり抜けても、組織は体内に時限爆弾を抱えていることになる。
組織内の爆弾を起動させるため、チンコロ(警察への密告)の嵐が吹き荒れている。表向き暴力団はこうした行為を蔑み、最低の外道としてはいるが、実際には身内の犯罪を警察に密告し、ライバルを放逐した例は枚挙にいとまがない。リークの大半は殺人事件だ。
「名前が挙がっているのは、行方不明になった幹部や、シノギで絡んだ共生者が被害者の事件。ほかにも、死体さえ出ていない事件がかなりある。寝返るか無期懲役か。どちらかを選べというわけで、えぐいやり方だが、効果は抜群でしょう」(警察関係者)
暴力団社会である程度の噂になった事件は、当然、警察がマークしている。そこに具体的な情報が寄せられれば、捜査は一気にすすむ可能性がある。
「親分たちは立場があるから言えんけど末端には関係ない。行方不明者の家族も知ってるし、細かい事情も分かってる。その気があるならいつでも教える」(山口組組員)
危険なリークの嵐は、もうしばらく猛威を振るう。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号