某球団のベテランスカウトに話を聞いたところ「あくまで私見」として、今季ドラフトの傾向を予測してくれた。しかも「そろそろ潮流が変わる時が来ている」と、興味深い展望まで語ってくれている。
「ここ数年のように、大学や社会人に核となるべき投手が少ないように感じる。昨年から1位候補として期待していた両左腕、上原健太(明大)、今永昇太(駒大)が今季は早々に出遅れました。さらにこの2投手に勝るとも劣らない即戦力評価の多和田真三郎(富士大)も秋の時点で投げていない。一方、今年の甲子園はスター揃いで盛り上がったし、大会後に行われたU-18ワールドカップの余韻もいまだ冷めやらない。となれば、自ずと目は高校生に向いてしまいますよね」
氏が名前を挙げた明大の上原は調整不足で春に出遅れたものの、秋のリーグ戦で復調傾向にある。しかし、今永は依然として長い回を投げる不安を抱えたままで、多和田に至っては右肩腱板炎症で秋のリーグ戦登板を回避している。
一方の高校生ドラフト候補たちはどうか。夏の甲子園で優勝した東海大相模の小笠原慎之介、準優勝した仙台育英の中核にあって大会3本塁打を放った平沢大河、高校球史に残るスピードスター・オコエ瑠偉(関東一)、夏の出場は逃したが最速152キロを誇る世代のエース・高橋純平(県岐阜商)など、注目された選手たちが実力相応の結果を見せ、プロ側の評価を大いに高めている。
「山本昌や和田一浩、小笠原道大(いずれも中日)といったベテランの大物が相次いで引退し、長年にわたり球界の屋台骨を背負ってきた松坂世代もそろそろ幕を引こうとしている。球界全体が世代交代を加速させている時だけに、スター性を備えた高校生ってやはり大きな魅力なんです。どの球団も今年の山田や柳田悠岐(ソフトバンク)のような日本人スターが欲しいはず。もし、高橋やオコエらを上位で獲得できれば、球団は2軍で寝かせようとはしないでしょう」
過渡期の真っただ中にあるプロ野球界。氏の言うように、2015年ドラフトが時代転換の起点となる可能性は充分にある。