それでも娘たちに「お父さん、1000万円もいる?」といわれたという元会社員男性、その後は高齢者専用マンションに入居し、貯金を取り崩す日々だ。超高齢化が進むなか、孫が社会人になってからも祖父母を頼るケースも珍しくなくなった。
「3年前、初孫としてずっと可愛がってきた孫(28歳)が『自分の店を持ちたい』というので、開業資金の足しにと虎の子の1000万円を渡し、さらに2500万円の借金の保証人になった。ところが最近、その店が潰れてしまい、私は孫の残りの借金2000万円の債務者に。ボロ家を売り払っても返せる額ではないので、自己破産することにしました。今は仏壇も置けないような狭いアパート暮らしで、ご先祖さまに申し訳ない気持ちでいっぱいです」(元自営業80歳)
もはや他人事とは思えない「孫破産」。避けるためにはどうすればいいのか。家族問題評論家の宮本まき子氏はこう助言する。
「今の子供世代は『祖父母世代は高度経済成長を経験してきた裕福な人たち。だから頼っていい』と思っている。一方、祖父母世代は『貧乏だった日本』も知っているので、自分の子や孫に『みじめな経験』はさせたくないと本能のように思っている。それで『野放図にお金を要求する子供世代と、野放図にお金を出してしまう祖父母世代』という構図が出来上がってしまう。
しかし、なんの方針もなく、息子・娘夫婦に言われるがままにお金を出し続けることは、結果的に家庭内のトラブルを招きやすい。資金援助する時には、どういう条件でいくらまで出すという取り決めをしておくことが大切です。ましてや自分の老後資金までつぶして、孫を支援すべきではありません」
孫疲れによる「下流老人」「老後破産」だけは避けたいものだ。
※週刊ポスト2015年11月6日号