国内

前駐韓大使 慰安婦問題の妥結は日本より韓国にかかっている

 安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領との初の首脳会談が11月2日に行なわれた。慰安婦問題をめぐって攻防戦が展開されると思われたが、朴大統領の方から、水面下で慰安婦問題解決の“示談金”ダンピングに応じる構えを示してきたのだ。日本政府が元慰安婦に対する人道支援をするというもので日経新聞は1億円台、韓国の東亜日報は3億円以上と報道している。この問題の行方を前駐韓大使の武藤正敏氏が解説する。

 * * *
 日韓首脳会談で朴大統領は、慰安婦問題の解決を求めましたが、この問題は国交正常化の際、「完全かつ最終的に解決」されています。

 ところが、韓国では皆が「慰安婦問題は未解決だ」と信じています。その原因を作ったのが、歴史問題にこだわった盧武鉉(ノムヒョン)元大統領で、2005年に慰安婦など反人道的な行為については日韓請求権協定の対象外だと主張しました。明らかな後出しジャンケンです。

 盧武鉉政権はその後も国内の対日協力者の財産を没収しましたが、これも後出しジャンケンです。政治的に終了している問題も、自分たちの歴史認識と相容れない問題は終わらないのです。

 日韓関係を難しくしているのは国民感情です。今後日韓関係は国際的視野で考えていくことが重要です。世界有数の民主主義国日本に欧米各国が求めているのは、現代の人権感覚に基づいて、「慰安婦は過去のことではあるが、女性の人権が蹂躙された案件だから、人道的見地からお詫びする」という姿勢であり、他の歴史問題にはない視点です。実は、日本は既にアジア女性基金で行なっています。

 本来ならあの時、おばあさんたちがお金を受け取っていれば、「これで償われた」と健やかな老後を送れていたはず。しかし、韓国国内で強い影響力を持つ挺身隊問題対策協議会(挺対協)が「法的責任」を要求して反発し、韓国政府は批判を恐れて「アジア女性基金からは受け取らない」と誓約書を出した元慰安婦に生活支援金を出したため、「償い金」を受け取らなくなったのです。

 報道では、日本政府が改めてアジア女性基金のような形で「償い金」を出すというプランが出ていますが、問題は韓国政府が挺対協の主張に振り回されることなく、国益と国家戦略、地域の安全保障、日本との関係、日韓の世論などを総合的に判断して対応できるかです。この問題の妥結は、日本側よりむしろ韓国側にかかっていると思います。

※週刊ポスト2015年11月20日号

関連記事

トピックス

アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
19歳の時に性別適合手術を受けたタレント・はるな愛(時事通信フォト)
《私たちは女じゃない》性別適合手術から35年のタレント・はるな愛、親には“相談しない”⋯初めての術例に挑む執刀医に体を託して切り拓いた人生
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン