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新作撮った紀里谷和明監督 「日本映画界を批判」の真意語る

モーガン・フリーマンとの秘話についても明かした紀里谷監督

 話題作『CASSHERN』『GOEMON』を手掛けてきた紀里谷和明監督。日本映画界から総スカンを食ったこともあった彼だが、一方で、ハリウッドからはオファーが殺到。5年をかけた大作『ラスト・ナイツ』(公開中)でハリウッドデビューを果たした。過去作品でも著名な俳優たちがこぞって出演する紀里谷作品。今回もクライヴ・オーウェンやモーガン・フリーマンら名優たちが参加。撮影エピソードやしくじり話を聞いた。

――ハリウッドデビューとなった映画『ラスト・ナイツ』の主演がクライヴ・オーウェンで、モーガン・フリーマンが共演とは。ビッグネームにそれだけで観たくなりました。著名な役者さんが揃いましたが、絶対外せない俳優はいたんですか?

紀里谷:オーウェンですね。たまたま(ハリウッドの)エージェンシーが僕と一緒だったので、そのつてでオファーしました。彼が決まったことで、いろんなところが回り始めた。モーガン・フリーマンが出演してくださると聞いた時は耳を疑いました。韓国の名優といわれるアン・ソンギも、「あのアン・ソンギさんですよね? こんな脇役でいいんですか?」という感じでした。モーガンの妻役のペイマン・モアディはイラン映画『別離』で、アカデミー賞外国映画賞を受賞しています。希望の配役ばかりです。

――製作に5年の年月がかかったそうですが、どれほど大変だったのでしょうか。

紀里谷:あまりの大変さにこれを完成させたら映画監督を辞めようと思っていたほどです。まず、撮影環境がマイナス20度でした。室内でもそれくらい寒いんですよ。服は南極仕様、ダウンジャケットの重ね着。靴も二重履きです。これだけ寒いとカメラもコンピュータも凍ってしまうので編集ができない。「コンピュータが充電されないってどういうこと?」って思いましたよ。電気毛布でコンピュータをくるんで編集していたくらいです。

 撮影部はずっとヘアドライヤーでカメラを温めていました。そんな状況下でまた雪が降るんですよ。降ってはいけないシーンで雪が降る。一方で、雪が溶けてしまい画がつながらないときには、スタッフが他の所から寝ないで雪を運んでくる…。過酷な状況下で撮影日数は50日間。実際3か月以上撮っていました。

――みなさん疲労困憊になりますね。

紀里谷:そうなんです。でも、監督はそんな極限状況で次々と決断を下していかなければならない。膨大な予算がかかっていて、これだけのキャストが揃っているわけですから、一つひとつが重い決断です。モーガン・フリーマンのシーンはひとつでも取りこぼしてしまうと、彼の撮影期間は決まっているため、映画自体がなくなってしまう可能性がありました。そんなことの連続でしたが、相談する人もいないし「俺って監督に向いていないんじゃないかな」という気持ちになってしまうんですね。こんな生意気なぼくでも弱音が出てくるんです(笑い)。  

――そんな落ち込んでいた時にモーガン・フリーマンに励まされたとか?

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