国内

茨城県教委「出生前診断で障害児減らす」の波紋 母親も怒り

 ダウン症の息子(9才)を持つ都内在住のA子さん(41才・専業主婦)は、11月19日の朝日新聞朝刊をめくっていて心臓が止まるほどの衝撃を受けた。

《障害児「妊娠初期にわかり出産減らせたら」茨城県の教育委員》

 社会面の右端に、こんな見出しの記事が掲載されていた。記事の中にはこうあった。

《茨城県の教育施策を話し合う18日の県総合教育会議の席上で(中略)、県教育委員が「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないのか。教職員もすごい人数が従事しており、大変な予算だ」と発言した。発言したのは、今年4月に教育委員に就任した東京・銀座の日動画廊副社長、長谷川智恵子氏。長谷川氏は「意識改革しないと。技術で(障害の有無が)わかればいちばんいい。生まれてきてからじゃ本当に大変」「茨城県では減らしていける方向になったらいい」などとした》

 会議後、報道陣の取材を受けた長谷川氏は、「世話をする家族が大変。障害児の出産を防げるのなら防いだ方がいい」と改めて主張。同会議に出席していた橋本昌・県知事も、彼女の発言について「問題ない」と話していた。A子さんが語る。

「自分の子供の存在を否定された気がしました。息子は生まれてくるべきじゃなかったのでしょうか? うちの子は争いを好まず、穏やかで、お絵かきが大好き。小学校でも普通学級に通っているし、“ただいま!”って帰ってくる、あの愛らしい笑顔を見ると本当に産んでよかったと思っています。“障害がある子は生まれる前に殺せ”なんて暴言を、まさか国から聞かされるとは…。怒りと恐怖で手が震えてきます」

 県教育委員には全国から非難が殺到し、20日、長谷川氏は発言を撤回。「障害のあるお子様をお持ちのご家庭に、心からのお詫びを申し上げる」と謝罪し辞意を表明した。

 長谷川氏の発言に端を発した今回の騒動は、図らずも“命の選別”について、日本の現状を突きつける。

 2013年4月から開始された新型出生前診断は、20万円という高額ながら、腕からの採血だけでダウン症など3種類の染色体異常が99%の確率で判別できる。

1年目に7740人だった同検査の受診者は、2年目には1万60人に増加。検査で異常を認める「陽性反応」が出たのは、これまで295人。より詳細な診断ができる羊水検査の結果、230人の胎児に染色体異常が確定した。

 うち96%の221人が中絶し、妊娠を継続したのはわずか4人。残りの5人は子宮内で胎児が死亡していた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン