師走に入り、急激に寒さが増した。少し熱っぽかったり、多少咳が出たりしたとしても「風邪かな? まァ、放っておけば治る」と思ってそのままにしている人は多いだろう。
そこには「風邪で死ぬ訳じゃあるまいし」という油断がある。確かに風邪は“寝ていれば治る病気”かもしれない。しかし侮ってはいけない。風邪に詳しい大分県済生会日田病院副院長の加地正英氏が指摘する。
「問題は風邪をひくことで引き起こされる合併症、いわゆる『風邪をこじらせた状態』になることです。そのうち副鼻腔炎や中耳炎、扁桃炎などは軽いほうで、それらで死亡することはまずありません。しかし肺炎などの重い合併症は、死に至ることも十分考えられる。特に免疫力の落ちた高齢者は要注意です」
肺炎は年間約12万人が亡くなる、現在、日本人の死因第3位の病気だ。誤って食べ物や唾液を気管に飲み込む「誤嚥(ごえん)」によって起きる「誤嚥性肺炎」が多いが、風邪をこじらせて発症するケースも多数報告されている。加地氏が続ける。
「肺炎がインフルエンザの合併症であることは有名ですが、風邪の場合でも発症します。免疫力の低下した高齢者が特に罹りやすく、肺炎による死亡者のうち約9割は65歳以上が占めているといわれています」
そのため高齢者介護の現場では細心の注意を払っている。介護老人保健施設で働く女性介護士の話。
「高齢者施設は面会者など外部の人の出入りが多いため風邪をひきやすく、かつ入居者は籠もりきりなので誰かがひくと蔓延しやすい。風邪が原因で肺炎になる方は毎年必ずいます。亡くなられたケースも少なくありません」
肺炎の次に医者が恐れる風邪の合併症が「急性咽頭蓋(いんとうがい)炎」だ。