芸能

下町ロケットとコウノドリ「ドラマの社会的役割を証明」の評

『下町ロケット』のヒットで幕引きとなった2015年のドラマ戦線。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が総括した。

 * * *
 早いもので今年も数日を残すのみ。テレビドラマ界を振り返れば、特に後半の話題は『下町ロケット』(TBS)が、かっさらった結果に。民放連続ドラマ1位、視聴率は最終回が22.3%、自己最高で着地。

 という数字もさることながら、注目すべき点は何と言っても、現実の町工場の職人やエンジニアたちがこのドラマを熱く支持したことだろう。「エンジニアの4割近くが視聴している」という調査結果(fabcross for エンジニア)もあるほど。

 では、女性の視聴者の反響が大きかったドラマは?

 筆頭として『コウノドリ』(TBS)が挙がるのではないか。『下町ロケット』と『コウノドリ』。テーマも視聴者層もまったく違う。放送局が共にTBSという以外には。けれども、この2つの作品にはある種の「共通性」が見てとれる。その共通性とは?

『コウノドリ』はこれまで描かれることの少なかった「産科医療」が舞台になった。例えば妊婦が「風疹」にかかると先天性障害の子が生まれる危険性がある──しかし、そうした重要な情報が実際の世の中では十分に伝わっていない。それが今の社会の現実だ。そこで「風疹」の予防啓発のために、このドラマと厚生労働省がタイアップ。情報を世の中にリアルに伝える手段として、テレビドラマが「広報的役割」を担った。

 ドラマの中で描かれたのは、「風疹」だけではない。未受診妊婦、喫煙妊婦、高齢出産、口唇口蓋裂、無脳症、助産師という仕事の本質……。つまり、『コウノドリ』は妊娠・出産について具体的な知識を養うツール、広報媒体としての役割も、見事に果たしていたのだ。

 視聴者がドラマを見る最初のきっかけ。それは人気俳優や宣伝かもしれない。しかし、そこから入って細かな情報が伝達され深い理解が生まれ、現実生活でのアクションにまでつながっていくのだとすれば……。

 ニュースや新聞記事は他人事。自分に引きつけ「自分ゴト」として捉えるのは、なかなか難しい。そんな人たちにもドラマが媒体ならぐっと身近に問題が迫ってくる。

 たとえば、『下町ロケット』を見た若者の中に、精密な部品を一つ一つ丁寧に作りあげる町工場の仕事を知って、感動と期待を感じ就職したいと考える人が出てきたら?

『コウノドリ』を見て、未受診妊婦のヤバさを知ったり、「子が生まれてきた奇跡を喜ぶ」という肯定的な気持ちに変われた母親が現れたら?

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