国内

小保方氏手記 捏造の有無より報道被害訴えたかったのか

訴えたかったのは報道被害?(小保方晴子氏)

 元理化学研究所の研究員・小保方晴子氏が著書『あの日』(講談社)を刊行した。研究者を志した動機からSTAP細胞論文発表までの経緯、捏造疑惑、そしてマスコミに追われた日々を記しているが、読後感は何ともすっきりしない。捏造疑惑については〈仕組まれた〉ものとし、調査委員会に対しては被害者意識だけを膨らませた。

 小保方氏はメディアに対しても不満をぶつけている。

〈特に毎日新聞の須田桃子記者からの取材攻勢は殺意すら感じさせるものがあった。脅迫のようなメールが「取材」名目でやって来る〉〈どんな返事や回答をしても、公平に真実を報道しようとはせずに、彼女が判定を下した善悪が読み手に伝わるように記事化し、悪と決めた私のことを社会的に抹殺しようとしているように思えた〉

 と記者の実名を挙げて報道姿勢を批判。NHKが向けたマイクが顔に接触したことにも言及し、〈髪の毛などがほほに少しでも触れるだけで、にやけた好奇の目でカメラを向けるNHKクルーの顔が浮かび、恐怖の発作に襲われるようになった〉と告白している。肝心の「捏造の有無」より、「報道被害」を訴えたかったのだろうか。

 2014年4月9日、疑惑に対する記者会見の当日、〈お辞儀をした時に顔にかかった髪を払わなくていいように、「シンプルなハーフアップにしてください」とお願いをした〉という。

 なぜあの髪型だったのかの“言い訳”にまで懸命なところは“小保方氏らしさ”が発揮されているが、彼女が明らかにすべきは自らの口で発表した「STAP細胞はある」ことを科学者として示すことにある。

〈最初から人生をやり直すことができたとしても、私はやはり研究者の道を選ぶ〉と述べるが、「手記の内容が本当であれば、彼女の言い分にも汲むべき事情があるが、科学者として実験の根拠となるデータ管理の不備に対する反省はない」(サイエンスジャーナリスト・緑慎也氏)というのが同書の正当な評価ではないか。

※週刊ポスト2016年2月12日号

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン