ドバイといえば角居厩舎では2011年のヴィクトワールピサです。前年の有馬記念、続くこの年の中山記念を勝ち、ドバイWCを制覇(M・デムーロ騎乗)。日本調教馬の初勝利でした。トランセンド(藤田伸二騎乗)との叩き合いの末、日本馬のワン・ツーフィニッシュ。これにはシビれました。
私はゴール付近の外ラチ沿いで見守っていました。ゴール後、並走するミルコと藤田が肩を叩き合っていた。陣営や日本のマスコミの歓喜はものすごかった。自分の管理馬の勝利というより、日本の馬が勝てたことが心底うれしかった。東日本大震災の直後でもあり、多くの感慨が押し寄せてきて、涙が止まりませんでした。
そんなドバイを見すえた今年の中山記念に、角居舎はフルーキーとラストインパクトを出走させる予定です。フルーキーはタメがきいてパワーも切れもあり、昨年大きく成長しました。ラストインパクトはドバイにも予備登録しています。
クラシックシーズンより一足早い、熱い闘いに期待してください。
●すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後14年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。競馬の他、馬文化普及や障害者競馬などにも尽力している。主な管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイアなど。
※週刊ポスト2016年3月4日号