「戦国時代はいつ殺されるかもしれないわけですから、戦で外に出ていく男性たちの安全を女性たちは心底願っています。そして、“家のためになるなら人質にもなります”とまでとりは言うんです。
夫が家を顧みない、と言う前に、私たちも、そこまで家を守る覚悟があるのか、考えてみるべきかもしれません」
と言うのは、子育てや家族問題を専門とするカウンセラーの高橋愛子さん。さらに、とりの度量の大きさを象徴する場面がある。
「第2話で、真田家の人々が百姓の落ち武者狩りに遭遇します。信繁が機転をきかせて、みんなで顔に泥を塗って、衣服も汚し、真田と気づかれないようにして生き延びよう、と提案した時、真っ先に“やりましょう”と、顔に泥を塗り始めたのはとりでした。家族を守るためなら汚れ役に徹する。そんな彼女の潔さは、今の女性にも必要な強さだと思います」(高橋さん)
続いて、とりとは逆に、いささかわがまますぎでは…と思うような振る舞いをしながらも、憎めないのが高畑淳子(61才)演じる薫だ。薫は信繁と松の母親だ。
「彼女は公家出身なのですが、どうやら身分はさほど高くなかったようで、公家コンプレックスの持ち主です。だからか、着飾ることにも執着しており、人質に行くなんてまっぴらごめんと思っている。でも、高畑さんがとことん突き抜けた演技をしてくださっているので、それが嫌みにならないんです」(屋敷さん)
そんな薫について、高橋さんは、こう分析する。
「彼女は、自分の感情にとっても素直。がまんもしませんし、自分の気持ちをごまかさず、どう思われようと本心を伝えます。それに、人質や犠牲になるのは嫌とは言いながら、信長の人質になっていた松を、信繁が助けられなかった時、薫は大泣きしています。
そんな家族に対する愛情も薫は人一倍強いから、周りの人は、どんなにわがままでも憎めない。薫のように素直に本音をさらけ出せる人は、裏表がないから愛される。その素直さは学びたいですね」(高橋さん)
※女性セブン2016年3月10日号