また張本氏はヤクルトのキャンプにも出向き、昨年のトリプルスリー・山田哲人の特打にも密着。同様に教育的指導を行なった。
張本:今度は4・4・4(4割40本塁打40盗塁)行こうか。
山田:いや、4・4・4はさすがに……(と困惑)。
張本:4割は難しいけど40本40盗塁はできるわな。
山田:……(いや無理だろ、という顔)。
張本:まあ頑張ってくれ。
山田:ハイ、頑張ります。
やっぱり聞いてない。ただ張本氏も自覚している様子だった。スタジオでは、「いったって聞きやしませんよ。こちらが先輩だから聞いてるだけ」と苦笑しながらコメントしていた。
こうしたOBの視察・熱血指導はキャンプの風物詩である。メディアの専属評論家として取材に訪れるケースがほとんど。そのため本来は話を聞くのが仕事なのだが、やはりそこは野球人、グラウンドに立つと血が騒ぐらしく、教え始めてしまうのである。パ・リーグの球団関係者が語る。
「今のコーチと理論が合っていたらまだいいんですが、大抵が真逆だから困るんです。しかも昔の人ほど、“ガーンと行け”などという抽象的な擬音混じりの指導で意味不明だし、“とにかく投げ込め”とか精神論になる。でも聞かないわけにはいかないから、選手たちは、“ハイ。ハイ。ハイ。頑張ります(ありがとうございます)”という定型文を繰り返して流しています(笑い)」
※週刊ポスト2016年3月11日号