「そうであるにもかかわらず、アベノミクスでは『GDP600兆円』という目標を掲げる。ふざけるな、ですよ。

 生産総数であるGDPは人口の多い国が大きくなるのは当然で、人口減に突入した日本では縮小するのが当たり前。500兆円という今のままで十分だし、仮に100兆円増えたからといって国民の生活が豊かになりますか?

 フランスのGDPは日本の半分ほどですが、“豊かさも日本の半分”ではないでしょう。GDPでは測れない豊かさを考えないと、その国の本当の実力は見えてこないのです」

 それだけではない。世界を見渡せば、国際テロ組織のアルカイダやIS(イスラム国)は依然勢力を維持し、いまだに宗教紛争が収まる様子はない。

 だが、日本には元来、宗教間の争いがない。料理や音楽など文化的な側面でも和洋折衷をもたらす寛容さを持つ。完備された医療・教育制度など、国の豊かさにつながるものはいくつもある。

「アメリカ人の友人は、私が夜にお稽古ごとや塾に通う高校生の娘の送り迎えをしないことに驚いていました。アメリカでは、高校生までは親が送り迎えをするのが当たり前なんです。交通インフラが整っていないというのも理由の一つですが、年頃の娘が夜に1人で出歩くのは危険だからです。

 日本の安全を金額に換算したらいくらになるのでしょうか。日本は世界から見れば、手の届かない憧れの的。それも奥ゆかしい“深窓の令嬢”なのです」(山口氏)

●やまぐち・まさひろ/1960年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、丸紅入社。モルガン・スタンレーなど欧米の金融機関を経て投資会社を設立。「ぐっちーさん」のペンネームでブログやメルマガを中心に活躍中。

※週刊ポスト2016年3月11日号

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