●『お義父さんと呼ばせて』(フジテレビ系火曜午後10時)
こちらはオジサン二人が華の、「ホームコメディドラマ」。遠藤憲一&渡部篤郎のW主演で話題を集めている。
大道寺保(遠藤憲一)と28歳年下で相思相愛のヒロイン・花澤美蘭(蓮佛美沙子)は結婚を考える仲。しかし、ヒロインの父・花澤紀一郎(渡部篤郎)は、大道寺と同じ歳で娘の結婚に猛反対。
カレと父、51歳のおじさん二人が激しくバトル! という物語の骨格はシンプルだ。その分、コント的作り込みが徹底し、掛け合いのテンポもよくメリハリが効いていて思わず笑いを誘う。
娘をとられたくない「父側」に感情移入して観る視聴者と、若い女との恋愛幻想にひたれる「大道寺派」になって観る視聴者。いずれも、中高年男性視聴者が入れ込めるホームドラマという点がオモシロイ。
考えてみると、シニア世代の男性が感情移入できる「ホームドラマ」って、これまであまり存在していなかったのではないか。『下町ロケット』『半沢直樹』もみな仕事のドラマだったし。
このドラマ、家族・家庭を舞台に新しい「枯れ専ホームドラマ」を生み出すチャレンジと言えるのかもしれない。私個人としては、お爺ちゃん(品川徹)のボソッと一言吐くセリフの可笑しさが最高。究極の枯れ専だけれど。
二つの「ホームドラマ」から見えてきたのは、時代とともに変化していく「家族」はまだまだ掘り下げ甲斐のある興味深い素材だということ。新しい角度から「家族」を描くことができれば、新しい視聴者を惹きつけ生み出す可能性がある、ということだろう。
例えば山口智子が言う「子どものいない二人の幸せを追求する」夫婦像を、周囲との軋轢や矛盾も含めて描き出すホームドラマなんて今どき格好のテーマだし、観てみたいと思うのは私だけではないはずだ。