小島:でも20年たってみると、自由だったなと思うんです。最初は描いていた構図と現実のズレに苦しみましたが、社会で経験を積み、特に子供が生まれてからは、次の常識を作れるだけのボリュームと多様性を持った私たち団塊ジュニア世代が、ここから自由にやり方を変えるしかないと思うようになりました。
工藤:団塊の世代にはいくつかの信仰があったんです。例えば絶対に値上がりするから家を買うという不動産信仰。結婚するまで処女でいて、いいところに自分を高く売るセックス信仰。今よりいい生活が待っている、努力すれば報われるという明るい未来志向が強かった。それが小島さんたちの世代から、そんなものはどこにもなくなってしまった。
小島:そうですね。これが幸せだといわれていたものが現実とはズレていて、何が幸せなのかわからない。ひょっとして自分で決めていいのでは、と気づいたのが私たちの世代です。最近、ワークライフバランスといわれますが、中心になっているのは団塊ジュニアとその前後の世代です。共働きじゃないと子供を大学に行かせられない世代ですから。
工藤:今は本当にそうですね。
小島:私が働き始めた1995年当時は、働く女性の気分も味わうけれど、結婚したら寿退社で主婦になるのが主流でした。でも、雇用機会均等法の施行から10年経っていたので、最先端の希少種として、男性と同じ待遇で、結婚して子供を産んでも働き続ける総合職の女性が少し増えてきて、かっこいいと思われていました。
工藤:小島さんの世代には母親みたいな人生は送りたくない、という人がすごく多いんです。母親の方は、自分の思うような親孝行な子には育たなかったと絶望して、人生を仕切り直ししようと、離婚してバツイチになったり、ボツイチになったり。
小島:ボツイチ?
工藤 夫が死んだ人です。バツイチはシングルマザーになったりして生活が大変ですが、ボツイチは遺産や生命保険が入るから裕福な人が多いですよ。すると今まで子供のために我慢してきたのが突然、生身の女になって、60才を過ぎて人生の仕切り直しに挑戦するわけです。
小島:いやー、この本(『後妻白書 幸せをさがす女たち』)を読むと、そうした人たちの事例がたくさん載っていて、びっくりしました。
※女性セブン2016年3月31日・4月7日号