ライフ

【書評】後妻白書 「女は死ぬまで幸せ探し」

【書評】『後妻白書 ─幸せをさがす女たち─』/工藤美代子/小学館/1512円

【評者】井上理津子(ノンフィクションライター)

 男性週刊誌が「死ぬまでセックス」のような企画を連発するのに首を傾げていたが、つまるところ男は性的快楽が大きなウエイトを占める生き物だと思えば合点がいく。じゃあ女は? 本書を読んで「死ぬまで幸せ探し」なんだと膝をたたいた。

 面白かった。いくつになっても「あきらめない」「困難と思わない」彼女らに拍手を送りたくなった。

 60代半ばの著者のまわりで、50代から70代の知人女性7人ほどが次々と結婚歴のある男性の妻になったのが執筆のきっかけらしい。遺産目的で夫を殺害した「後妻」がワイドショーを賑わせたりして、死語になりつつあった「後妻」という言葉が復活の途にあるらしい。後妻となった著者の知人らのケースの共通点は相手の男性が持病や高齢で、余命が限られていることだと冒頭に読み、かなり驚いた。

 彼女たちが今さら結婚するのは、なぜか。著者は会いに行く。

 30代で不倫に苦しんだのを最後に恋愛から遠ざかっていた桃子さんは、64歳で20歳年上の男性と結婚した。男性は桃子さんが営むハーブティーの販売店の常連で、彼女の誠実な対応に感激したのがきっかけで、好意を寄せてきた。脳梗塞で入院していたが、退院後に顔を見せた翌日にプロポーズされた。3億円の資産に惹かれたとは本人は言わないが、質素だった服装が高級ブランドに変わった。「2、3分のセックス」をし、ベッドで抱き合う時間に満たされた。

 著者は、かつて48歳の処女が本音を語ったこんな言葉を思い出す。

「東大に受かった人は、東大なんて卒業したってたいしたことないですよって必ずいいます。でも、東大を何度も受験して落ちた人間にとっては、やっぱり東大は東大なんです」

 ずっと独身だった桃子さんにとってブランド品やセックスが“東大”だったのだろうか。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン