ライフ

【著者に訊け】のむらしんぼ氏『コロコロ創刊伝説』

のむらしんぼ氏が明かすコロコロ創刊伝説

【著者に訊け】のむらしんぼ氏/『コロコロ創刊伝説』/小学館/583円+税

 男の子なら、誰もが一度はあの分厚く、やや小ぶりな漫画誌を手にしたことがあるのではないか。創刊39年を迎えた伝説の少年誌『コロコロコミック』だ。この漫画に関わった人たちのドキュメンタリー漫画『コロコロ創刊伝説』の第一巻が発売になった。作者は創刊時から今まで唯一、『コロコロコミック』で少年漫画を描き続けているのむらしんぼ。主人公は著者本人だが、登場人物は『コロコロコミック』に関わった人たちすべてだ。

 のむらの作品を読んだ編集者が、こんなセリフを突きつけるシーンがある。

〈「ハッキリ言って…、古いんですよね~!!」〉

 創作活動に携わる人間にとって、実際にナイフで刺されるより怖い言葉である。しかし、のむらは何でもないことのように語る。

「遠回し、遠回しに言われて、翻訳すると、そういう風に頭の中に入ってきた」

──傷つきませんか?

「ネット社会になって、のむらしんぼはもう終わったとか、散々書かれたから免疫できちゃった。自覚もしてたし」

 じつは30年以上前にも、すでに「古い」と言われたことがあった。

「何でもいいから、四コマのギャグ漫画を描いてって頼まれて、何となく、ハゲ丸ってタイトルが浮かんだの。そうしたら担当編集者に『古くない?』って。もう、おもしろいもん描けないし、漫画家として終わりかなと思ってたときでね」

 しかし、当時、俳優の鶴田浩二が『傷だらけの人生』の中で歌っていた言葉に勇気を得た。

「古いものほど、新しいじゃござせんか(実際は微妙に違うがのむらの中ではこう記憶されている)、って言うんだよね。それで初めて編集者に言い返したの」

 企画会議で「つるピカ」が付いて『つるピカハゲ丸』になったが、そこは譲歩した。するとこれが大ヒット。29歳のときである。

 年収200万が900万になり、900万が3500万になり、3年後にアニメ化されたことで翌年は6000万までいった。ここがピークで、アニメが終わり、連載が終わりと、そこからは緩やかに下降していく。1000万を切ったあたりで生活が困窮し始め、気づくと40代半ばで消費者金融に手を出していた。

「ギャンブルで大金を使ったとか、銀座で遊びまくったとか、ぜんぜんないのに、お金って、知らないうちになくなるんですよね」

 お金が去り、やがては妻と三人の子も去った。そのことは漫画の中でも描いた。

「離婚のことなんて描きたくなかったんですけど、編集者に描け描け言われるんですもん。自分をさらしてこそ漫画家なんだ、って。基本的に素直なんで」

 借金を背負っていることも描写した。作品中では、借金はいくらあるのかと問われ、〈「ざっとこんなもん!!」〉と指を3本立てる。ケタは読者の想像に委ねているが、率直に、いくらなのか訊いてみた。

「720万です。でも三本指が絵的によかった。二本指だとピースしているみたいで変だし。この本が10万部売れれば何とかなるんですが……」

関連記事

トピックス

会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
阪神独走Vで藤川監督の高知商の先輩・江本孟紀氏が「優勝したら母校に銅像を建ててやる」の約束を「忘れてもらいたい」と苦笑 今季の用兵術は「観察眼が鋭い」と高評価
阪神独走Vで藤川監督の高知商の先輩・江本孟紀氏が「優勝したら母校に銅像を建ててやる」の約束を「忘れてもらいたい」と苦笑 今季の用兵術は「観察眼が鋭い」と高評価
NEWSポストセブン
59歳の誕生日を迎えた紀子さま(2025年9月11日、撮影/黒石あみ)
《娘の渡米から約4年》紀子さま 59歳の誕生日文書で綴った眞子さんとまだ会えぬ孫への思い「どのような名前で呼んでもらおうかしら」「よいタイミングで日本を訪れてくれたら」
NEWSポストセブン
「天下一品」新京極三条店にて異物(害虫)混入事案が発生
【ゴキブリの混入ルート】営業停止の『天下一品』FC店、スープは他店舗と同じ工場から提供を受けて…保健所は京都の約20店舗に調査対象を拡大
NEWSポストセブン
藤川監督と阿部監督
阪神・藤川球児監督にあって巨人・阿部慎之助監督にないもの 大物OBが喝破「前監督が育てた選手を使い、そこに工夫を加えるか」で大きな違いが
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(時事通信フォト)
『あんぱん』蘭子を演じる河合優実が放つ“凄まじい色気” 「生々しく、圧倒された」と共演者も惹き込まれる〈いよいよクライマックス〉
週刊ポスト
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン