「その当時の医療技術ではもう再起不能だと言われ、行った病院も救急病院で不安があり、それで、他の病院に強引に転院しようとしたんだけど、病院側は協力的でなく、カルテもレントゲン写真もくれない。病院は人を助け、守るところだと思っていましたが、違うんだ、と25歳にして社会の現実の一端を知った気がしました」
転院先の病院では、ベトナム戦争で開発された新しい医療技術が試された。骨に鉄芯を入れ27針縫う大外科手術だったが、「仮面ライダー1号は、ショッカーを追って南米に向かった」という設定で2号が登場し、1年間のリハビリを経て復帰した。そして1号と2号がそろった『仮面ライダー』は高視聴率を記録し続け、国民的番組となっていったのである。
◆ふじおか・ひろし/1946年、愛媛県生まれ。1965年、松竹映画で俳優デビュー。スタントマンを使わないアクション俳優として活躍し、ドラマ『仮面ライダー』『白い牙』『特捜最前線』、映画『日本沈没』『野獣死すべし』など主演多数。NHK大河ドラマ『真田丸』には本多忠勝役で出演中。斬(真剣による演武)をはじめ、あらゆる武道に精通する武道家としても知られる。
撮影■藤岡雅樹 取材・文■一志治夫
※週刊ポスト2016年5月20日号