例えば先日も、高校生のお嬢さんを連れてきたお母さんがいたのですが、娘さんは卵巣が腫れていて、詳しく検査するにはMRIが必要だったんです。保険がききますが、それでも1万円。するとお母さんは“今月の給料が入らないと検査ができません。今でないといけませんか?”とおっしゃる。でも実際に、母子家庭でお子さん2、3人を抱えて、ギリギリのところで生活をされているかたは、このかたに限らず確かにいるんです」(蓮田さん)
こども食堂を立ち上げる際、蓮田さんは学校関係者などにも子供の貧困の実態について聞き取りをしている。そのなかでわかったこともあった。
「ある教師の話では、現代の子供の貧困はわかりにくいということでした。フリマで着るものも買えますし、貧困といわれる家庭の子供でもゲーム機は持っている。食べ物に困っているのにスマホをいじっているんです。そういう意味で、貧困が非常に見えにくくなっているようです。
だからこそ、われわれができることは何か、どうやったら子供を救えるか考え、一刻も早くこども食堂を立ち上げたいと思ったのです」(蓮田さん)
ただ全国に広がる「こども食堂」には課題もある。こども食堂に行くと貧困に見られてしまうので、実際は困窮しているのに行くのをためらう家庭もあるのだ。
そのため学習支援の場を提供して、食と学びの両面から本当に救いの手が必要な子供たちを支援するなどの工夫がなされている。全国初となる病院での「こども食堂」は意義も大きい。
「貧困の子供たちのなかに、医学的に飢餓に近く低栄養状態になっている子がいるとすれば、食事を提供することによって、治療をする役目もあるのではないかと考えました。また危険な状態になる前に気づいてあげることもできますからね。病気になって検査や点滴、手術するばかりが病院の医療行為ではないはずです」(蓮田さん)
そしてあなたにも、子供の貧困問題で、できることがある。例えば『子供の未来応援基金』(www.kodomohinkon.go.jp/fund/)は、寄付金をもとに、子供の生きる力を支援する活動に使われることとされている。
テレビでは連日、東京都知事の公金横領疑惑問題が伝えられている。その陰で、この瞬間も切実に救いを求めている子供たちがいることを忘れてほしくない。「かわいそう」「大変だね」だけでは、どうか終わらせないで──。
※女性セブン2016年6月23日号