「総理が伊勢志摩を選んだのは、皇室の祖霊を祀る伊勢神宮に各国首脳を案内することに主眼があった。安倍支持層への強いアピールになった」(自民党幹部)
しかし、この安倍首相の神道への傾斜が仏教団体との軋轢を生んでいる。伝統仏教は昔から自民党の地盤であり、前回の2013年参院選でも、全日仏は自民党候補12人を推薦し、そのうち11人が当選した(ただし全日仏は推薦の有無を公表していない)。
一方で全日仏は神道系とは逆に政教分離の観点から長年、首相の靖国神社参拝に反対しており、その11人の推薦議員は全日仏との間に「総理や閣僚の靖国参拝反対」の誓約書を交わしていた。このことは本誌2014年5月30日号で報じ、全日仏も当時、誓約書の存在を認めた。
「安倍首相は一般の自民党議員より神道系宗教団体との関わりが強い。そのため、仏教系など他の教団が自民党支援に複雑な意識を強めている」(清水氏)
仏教票と神道票は靖国参拝問題で正反対の対応を求めており、自民党の候補たちはその矛盾を抱えながら双方から票を得るという“曲芸”を演じている。
そんななか、他の保守系宗教団体の動きも活発化。佛所護念会教団は山谷えり子氏らの支援を表明し、さらに保守色の強い幸福の科学は、幸福実現党で独自候補を擁立しながらも、「現場レベルでは幸福の科学の信者票を頼りにしている自民候補は少なくない」(自民党代議士)といわれる。
※週刊ポスト2016年7月1日号