部分切除して乳房を「温存」するか、全摘出するケースとなるか、その選択は進行ステージとは関係ない。
「がんができた場所にも関係します。がんが乳頭の周囲にあった場合は、ステージ0でも全摘になるケースもあります」(富永院長)
数年前までは乳房を残す「温存」ができるか否かが、乳がん患者にとって重要な問題だった。女性として、乳房を残したいから全摘をしたくないという患者も少なからずいた。しかし、2013年7月に人工乳房再建への保険適用が始まり、患者の金銭的、精神的負担は軽減され、全摘して乳房を再建する道は大きく開けた。
「全摘すれば乳房からの再発がほぼなくなるので、温存よりも局所再発率が3%下がるんです。そういったことも説明した上で判断していただくことになります。近年、乳房の全摘と同時に再建する同時再建手術が可能になるなど、再建技術も向上しているため、全摘を選択する患者さんも以前に比べて増えてきました」(前出・富永院長)
現在麻央は、乳がん治療に特化した「ブレストセンター」が設置される都内の病院に通院し、放射線治療を受けながら手術に備えているという。
「手術すれば100%治る、切らなくても抗がん剤治療で助かるなどと断言することはできない。医療には正解がないんです。摘出したのに転移してしまった、抗がん剤がうまく体に合わなかったなど個人差もあります。だからこそ、“あのとき手術していれば”“もしかしたら切らなくてもよかったのかもしれない”と自分が選んだ治療法に迷い続けるかたは少なくありません。どんな治療法と生きていくか、その選択は非常に難しいのです」(都内の乳がん専門医)
※女性セブン2016年7月28日号