芸能

桐谷美玲もタッキーも 恋愛ドラマの少女漫画化が止まらない

桐谷美玲主演の『好きな人がいること』(公式HPより)

 桐谷美玲演じるパティシエをめぐる恋模様を描く月9『好きな人がいること』(フジテレビ系)、武井咲演じるティファニーに勤めるヒロインが、副社長(滝沢秀明)に恋に落ちていく『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)。この2作に、最近の恋愛ドラマの傾向が見て取れるという。テレビ解説者の木村隆志さんがズバリ解説する。

 * * *
 数年前まで恋愛ドラマは激減していましたが、このところ毎クール2~3本が放送されるなど復活の兆しを見せています。今夏も月曜21時に『好きな人がいること』、火曜22時に『せいせいするほど、愛してる』が放送されていますが、ともに少女漫画風の脚本・演出が強調されていることに驚きました。

 そう感じた理由は、「胸キュンアクション」「甘いセリフ」「ツンデレと王子のWキャスト」「男の肉体美」の4点セット。これらには、ターゲットを女性に定め、「思わずツイートしたくなる」シーンを増やして、リアルタイム視聴をうながそう、という制作サイドの狙いがあります。

 たとえば、『せいせいするほど、愛してる』の「風邪なんて俺にうつせ」というセリフからのキス、靴が壊れたときお姫様抱っこでブランド靴店に連れて行くシーンでは、ツイッターが盛り上がっていました。『好きな人がいること』にもこのようなシーンが多いのですが、視聴率はともに「2ケタに届くか届かないか」であり、制作サイドの狙い通りとはいきません。

 そもそも「思わずツイートしたくなる」4点セットは、胸キュンする人もいれば、冷めてしまう人や爆笑してしまう人もいるなど、決して万人が求めるものではありません。むしろ、4点セットをパッチワークのように組み合わせている分、「物語を追い、キャラクターに感情移入する楽しみが損なわれる」リスクが高く、「毎週見る」連ドラの必要性は薄いのです。

 実際、ここ1年半くらいの間に、『アオハライド』『ストロボ・エッジ』『ヒロイン失格』『Orange』『黒崎くんの言いなりになんてならない』などの少女漫画原作映画が立て続けにヒットしました。いずれも上記4点セットの多くを含む作品であり、“単発映画”の成功に“連ドラ”が影響を受けているのは明白です。

 思えば、一年前の夏に放送された恋愛ドラマ『恋仲』(フジテレビ系)も、『ストロボ・エッジ』の福士蒼汰さんと『アオハライド』の本田翼さんを起用し、4点セットをふんだんに盛り込むなど、少女漫画原作映画のインスパイア作品でした。一年後の今、「女性をターゲットに絞って、4点セットを前面に出す」傾向がエスカレートしているのが気がかりです。

 もともと恋愛ドラマは、1980年代後半から1990年代にかけてドラマシーンのど真ん中に君臨し、男性も楽しめる作品が放送されていました。なかには「ドジで一生懸命なヒロイン」「クールで男らしいヒーロー」などの漫画的なキャラクターも多かったのですが、男女ともに2人を応援できる脚本・演出が施されていたので、人気作となりえたのです。

 現在の視聴者に、「ヒロインやヒーローを客観的に応援するより、自分に置き換えて主体的に見たい」という人が増えているのは間違いありません。しかし、それでも「私がキュンキュンしたい」という主体的な人ばかりではないのが事実。

 3月まで放送されていた『ダメな私に恋してください』(TBS系)が、まさに今期と同じ4点セットを備えた少女漫画原作の作品だった一方、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)は、ヒロインとヒーローを応援するタイプの作品でした。真逆の作風にも関わらず、平均視聴率が9%台と五分だったのは、「視聴者が少女漫画原作や4点セットばかりを求めているわけではない」ことの証ではないでしょうか。

 もし現在の視聴者が、「私がキュンキュンしたい」主体的な人と、「ヒロインやヒーローを応援したい」客観的な人に二分されているとしたら……現在放送されている2作は、ヒロインやヒーローを応援したくなる要素を加えることで、より多くの人に見てもらえるかもしれません。

 個人的には、「日本中の人々が毎週無料で見られる」テレビドラマだからこそ、制作サイドが少女漫画原作映画の成功に捕らわれることなく、男女ともに楽しめる作品に回帰することを願っています。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

関連記事

トピックス

中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
決定戦で横綱を下した安青錦(写真/JMPA)
【最速大関・安青錦の素顔】ウクライナを離れて3年、なぜ強くなれたのか? 来日に尽力した恩人は「日本人的でシャイなところがあって、真面目で相撲が大好き」、周囲へ感謝を忘れない心構え
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
主演映画『TOKYOタクシー』が公開中の木村拓哉
《映画『TOKYOタクシー』も話題》“キムタク”という矜持とともにさらなる高みを目指して歩み続ける木村拓哉が見せた“進化する大人”の姿
女性セブン
北川景子
《子どもを寝かせてから高いお菓子も》北川景子、子育てエピソードに広がる共感、失敗談も隠さずオープンに “39歳のママ女優たち”が支持を集める理由 
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト
CM露出ランキングで初の1位に輝いた今田美桜(時事通信フォト)
《企業の資料を読み込んで現場に…》今田美桜が綾瀬はるかを抑えて2025年「CM露出タレントランキング」1位に輝いた理由
NEWSポストセブン
亡くなったテスタドさん。現場には花が手向けられていた(本人SNSより)
《足立区11人死傷》「2~3年前にSUVでブロック塀に衝突」証言も…容疑者はなぜ免許を持っていた? 弁護士が解説する「『運転できる能力』と『刑事責任能力』は別物」
NEWSポストセブン
アスレジャー姿で飛行機に乗る際に咎められたそう(サラ・ブレイク・チークさんのXより)
《大きな胸でアスレジャーは禁止なの?》モデルも苦言…飛行機内での“不適切な服装”めぐり物議、米・運輸長官がドレスコードに注意喚起「パジャマの着用はやめないか」
NEWSポストセブン
(左から)小林夢果、川崎春花、阿部未悠(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫の余波》女子ゴルフ「シード権」の顔ぶれが激変も川崎春花がシード落ち…ベテランプロは「この1年は禊ということになるのでしょう」
NEWSポストセブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン