麻生氏が菅氏の“噛ませ犬”として目をつけたのが岸田氏だった。藤本氏が続ける。
「今回の内閣改造で一番重要なのは間違いなく幹事長ポスト。安倍首相の意向は麻生、菅、谷垣の3人を留任させて政権の骨格を守りたかった。だが、3人の思惑は違う。谷垣さんは降板したがっていたし、菅さんは幹事長をやりたがっていた。
それに対して、麻生さんは菅さんに『そんなに財政に口を出したいのなら幹事長の前に財務大臣をやってみろ』という気持ちでしょう。だから岸田さんの幹事長就任をバックアップすることで菅幹事長の芽を完全に摘み取り、菅さんがこれ以上政権内で力を強めるのを牽制しようという気持ちはあったと思います」
菅VS麻生・岸田連合のパワーゲームに発展したという見方である。一方、安倍政権の大番頭として権勢を振るう菅氏にすれば、仮に岸田氏が幹事長になって後継総理という流れができると、いっぺんに力を失いかねないという懸念もあった。
そこで「谷垣さんは車椅子幹事長でもいいじゃないか」という動きも出ていた。菅氏に近い内閣官房スタッフがいう。
「安倍総理は菅さんを官房長官に置いておきたいし、できれば谷垣さんも残したかった。菅さんは、自分が幹事長になれないなら、総理の意向通りに病み上がりの谷垣幹事長を留任させ、官房長官のまま谷垣氏をサポートすることで事実上、官邸と党の両方をコントロールしていくことを考えていたかもしれない」
※週刊ポスト2016年8月12日号