ライフ

橋爪大三郎が選ぶ日本と日本人のあり方を考える名著10冊

社会学者・橋爪大三郎氏

 混迷の時代を迎えているいま、日本と日本人のあり方を考えるための思想と文学の名著を10冊、社会学者の橋爪大三郎氏に選んでもらった。

 * * *
 150年前に始まった日本の近代化は、成功もし失敗もした。大東亜戦争のように、自分勝手に行動すれば世界のルールと衝突して、破綻する。日本以外の、非西欧文明の国々も、近代化の道を模索して試行錯誤している。

 戦後、日本はアメリカのルールべったりを選択し、安全と経済発展を手に入れた。だがアメリカは地盤沈下し、世界は多元化して不安定となった。日本は進むべき方向を見失い、八方ふさがりの閉塞感にとらわれている。

 だからこそ日本は、新たなビジョンを世界に提供しよう。西欧文明の伝統に属さずとも近代化を担うナショナリズムを育てることができ、多様な文化を失わない国々が共存できる、世界ルールを整える道があることを。

 では、そもそも日本のナショナリズムの原点はどこにあるのか。近代化を進め、国際社会に参入するとき、何が追い風となり、何が足かせとなったのか。世界でもユニークな近現代をたどった日本の、具体的な経験を改めて見つめ直し、近隣や世界の人びとに理解できる言葉で発信しようではないか。

 以下、そのために読むべき10冊の思想関係の書を選んだ(カッコ内は成立年ないし刊行年と、現在入手できる主な版元)。

【1】『神皇正統記』(1339年。岩波文庫)

 天皇と武士が覇を争い、天皇の政権自体も分裂のただ中にあった南北朝時代、南朝側の中心人物だった北畠親房が、あるべき政府の姿について、歴代天皇の事蹟を回顧しながら考察した書。冒頭の「大日本者神國(おほやまとはかみのくに)也」という一節に凝縮される思想が伏流して幕末に尊皇思想として噴出し、日本の近代化を牽引する要因となった。この書より前にあるべき国の姿について深く考察した例はなく、日本の政治哲学の原点と言える。

【2】『西洋紀聞』(1715年。岩波文庫)

 江戸中期の儒学者で幕政にも参画した新井白石が、来日した宣教師を審問し、西洋各国の歴史、地理、政治、風俗などについて記した書。江戸幕府はキリスト教など海外の価値観が流入するのを怖れて国を閉ざした一方、国際社会について情報を集めることが重要とも考えていた。白石はそうした一流の知識人だが、その彼でも西洋の理解には限界があった。彼に盲点があるなら、現在のわれわれはなおのことだろう。それを反省する素材として、最適な書物。

トピックス

志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
原付で日本一周に挑戦した勝村悠里さん
《横浜国立大学卒の24歳女子が原付で日本一周に挑戦》「今夜泊めてもらえませんか?」PR交渉で移動…新卒入社→わずか1年で退職して“SNS配信旅”を決意
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン