1979年からいまだ連載が続く『風雲児たち』(みなもと太郎、潮出版社刊、文庫版はリイド社刊)は、経済漫画『インベスターZ』の編集を手がけたコルク社長の佐渡島傭平氏の推薦。もともとは幕末をテーマに描かれるはずだったが、「幕末の状況はそもそも江戸時代の成立に根がある」という作者の意図で、江戸300年を通じた“超大河漫画”に発展したという。佐渡島氏が興奮気味に語る。
「歴史上の大きな事件には、関わった人の『感情』がある。同作は歴史を動かした人たちの『感情』が丁寧に描かれていて、すごく伝わってくる作品なんです」
その象徴的な場面として佐渡島氏が挙げたのが、吉田松陰の埋葬シーンだ。
「当時の埋葬は土葬で、真っ裸にされて、体育座りのような格好で樽の中に入れられるんです。吉田松陰は斬首されているので、両手を受け皿にして、お腹のあたりで自分の首を抱えて入っている。それを見て、“泣いたことがない”といわれる伊藤博文が号泣したという逸話が描かれています。伊藤博文が政治家になる決意を固めたのは、実はこの瞬間に芽生えた感情だったのでは……と考えさせられます」
※週刊ポスト2016年9月2日号