「うーん。それはやっぱり、ラブコメも好きだし(笑)、現実には、夫婦すごく仲良い友人や、子供を溺愛している友人もたくさんいますから、私が味わっていない幸せがあることはわかっているから。そういう意味では、諦めてしまっているところもあるのかな。でも、あれもこれもできるほど器用じゃないし……。
今は絵の仕事を増やすことが、自分のプライド的にも、金銭的にも最優先なんです。だって、それがなかったら、私、何もない女ですよ。43歳で、定職も彼氏も家も、もちろん子供もいない。笑っちゃいますよね。だからこそ、絵を頑張らないといけないんです」
派遣の仕事の合間に自身のHPを整備し、営業用のパンフレットを作成し、自費を投じて個展を開くなど、こつこつと営業活動にいそしんできた。それでも現実は甘くない。
「絵だけで食べていけるようには、この先もならないと思います。もう43ですしね。それでいいと思ってるんです。派遣の仕事も、色んな人と知り合えて嫌じゃないし。ただ、絵を仕事として続けて行きたいは思っています。絵は、趣味ではなく、あくまで仕事にしていたい。一番やりたいのは映画の仕事ですね。でも映画雑誌は減っているし、イラストレーターに定年はないから……。
ごめんなさい、話が暗くなっちゃいましたね。私の座右の銘は『奇跡を待つより、捨て身の努力よ!』。そう、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサトの台詞。『君の名は。』もよかったけど、この夏の話題作では『シン・ゴジラ』のほうが好みだったかな。庵野秀明監督、大好きです」
絵と映画で満たされている奈々子には、恋愛とはまた別の、充実している人間特有の幸せオーラがある。互いの仕事や趣味を理解しあえるパートナーとなら楽しくやっていけるのではないか、と聞いた。
「そんな人がいたらいいけど、男の人って若い子が好きだからなぁ。話は少しずれますが、最近、一人暮らしの限界を感じてはいるんです。一人が長いと、どうしても独りよがりになっていくなって。自分の話ばかりするようになったり。職場に50代の独身女性がいて、ちょっとそういうタイプなので反面教師にさせてもらってるんです。あと10年、できれば20年は絵を頑張って、将来は気の合う友達とシェアハウスで暮らせたらなんて、夢を見ています」