稲田朋美・防衛相「白紙領収書受領」問題のスクープ(日曜版8月14日号)は、赤旗の取材手法を端的に示している。同紙編集部は情報開示請求により、稲田事務所の政治資金収支報告書に添付された領収書のコピーを入手。彼らはその山の中から、自民党同僚議員の政治資金パーティー券購入の際に稲田事務所が受け取った領収書に目をつけた。
領収書の発行元はそれぞれ異なるのに、日付、宛名、金額が同じ筆跡に見える。記者らは文字の鑑定を“筆跡鑑定人”に依頼、「稲田事務所の会計責任者が、領収書の金額や宛名を書いた」ことを確かめた。
稲田事務所は赤旗の取材に対し“白紙領収書”の受領を認めている。
大臣に任命された途端、「政治資金問題」をスクープするという“調査力”には、他紙の記者も舌を巻く。赤旗は日常的に情報開示請求を行い、与党議員の収支報告書を常にチェックしているとみられる。大臣など要職に就いたところで政権への攻撃材料として使うべく、あらかじめ準備しているのだろう。
「赤旗には個別のジャンルに強い記者がいる。政治資金調査のスペシャリストとして知られたベテラン記者は、収支報告書を大テーブル一面に敷き詰め、自ら分析する手法を取っていた。赤旗ではその技術の伝承が課題だったが、近年は政治資金分析用のフォーマットをエクセルで作成し、グループで疑惑を見つける仕組みが整ってきたようだ」(赤旗記者と付き合いのある全国紙記者)
他にも、保守系議員に食い込んで情報を集める政治記者や、防衛・基地問題に強い記者、年金問題に強い記者など、全国紙ではチームで取材するようなテーマも一人で取り組むベテラン記者らがいるという。ただし事件などで記者の手が回らないことも多く、通信社の配信記事も少なくない。
※SAPIO2016年10月号