国内

山崎拓氏「自民党のいいところは多様性だが今は単色」

山崎拓・自民党元幹事長 撮影/太田真三

 当意即妙とはいえない。自分の頭と言葉で答えようと、しばし押し黙る。その沈黙が山崎拓という政治家の重みを物語っていた。政界引退から4年、回顧録『YKK秘録』を今夏に上梓し、盟友・加藤紘一氏を失った今、この男は何を思うのか。ジャーナリストの青木理氏が地元・福岡を訪ねた。

 * * *
 憲法解釈の変更という搦め手を弄して集団的自衛権の行使に舵を切った安倍政権。これに猛批判が吹き出したのは記憶に新しいが、自民党で要職を務めた重鎮政治家も次々と懐疑の声をあげ、注目を集めた。

 古賀誠。亀井静香。武村正義。村上正邦。藤井裕久。ある者は会見を開き、ある者は雑誌に寄稿し、ある者は共産党機関紙「しんぶん赤旗」のインタビューにまで登場し、現政権の暴走に警鐘を鳴らした。

 一方、本来なら真っ先に声をあげたはずの男は沈黙した。加藤紘一。自民党でも生粋のハト派として知られた加藤なら、政権批判のトーンも一際強いものになったに違いない。

 だが、加藤は声をあげられなかった。長きに及ぶ闘病生活の末、ついに9月9日、永眠。享年77。葬儀では、小泉純一郎とともにYKKと称される盟友関係を築いた山崎拓が弔辞を読み、「最高最強のリベラルが去った」と加藤の死を惜しんだ。

 その山崎も最近、政権の有り様に懐疑的だという。しかし、はて、と首をひねる。タカ派として鳴らした山崎は、9条を含む改憲を訴えていたのではなかったか。なのに何を懸念し、何を案じているのか。

「自民党のいいところは多様性だった。その党内で政権交代をやっていく構造になっていたわけです。だけど、今は単色。というより、無色透明、個性がない。個性と個性がぶつかり合う政治のダイナミズムがない」

 開口一番、山崎はそう嘆いた。考えてみれば、YKKは確かに多様だった。タカの山崎、ハトの加藤、変わり者の小泉。山崎が苦笑まじりに振り返る。

「小泉は不思議な男でね。総理になるまで外国に行ったことがない。議員は大型連休に外遊するのに、彼は外国に関心がなかったんだ」

──その小泉氏が首相になり、日朝首脳会談などを成し遂げたのだから、政治的な勘はピカイチなんでしょう。

「ローマ皇帝が『人心を掌握するにはパンとサーカスを与えよ』と言ったらしいね。小泉がよく僕に話してたよ。パンは経済・生活。サーカスは人を驚かせるような政治。彼の電撃訪朝もそう。僕は加藤をして『最高最強のリベラリスト』と言ったけれど、小泉は『最高最強のポピュリスト』ですよ」

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン