そんな小泉、加藤、山崎には、初当選同期という共通点はあった。だが、政治信条的には異色な3者が「経世会支配の打倒」を結節点に共闘し、永田町に名を轟かせた。
「経験なき知識は知識なき経験に劣る、という言葉があるでしょう。学歴が高くても、それは単なる学校知識であって、自分の経験から出てきた知ではない」
確かにその通りである。だが、それとYKKがどう結びつくのか。
「いまの自民党には、保守だリベラルだというような知識、つまりは本当の思想・信条のぶつかり合いがない。ぶつかり合わなければ洗練されないから、洗練された野性味がいまの政治家にない。誰かいるか、あなたに聴きたいくらいですよ」
異物同士のぶつかり合いの欠如。だから生じる無色透明、無個性、一強に従う羊のごとき政治家の群れ。日本政界が急速に堕してしまったのはなぜか。山崎が挙げたのは、私も予想した3つのエレメントだった。
まずは選挙制度。中選挙区制を廃し、比例代表並立の小選挙区制を導入したことにより、党執行部の力は飛躍的に高まった。山崎も言う。
「小選挙区制にしたら派閥がなくなり、信条のぶつかり合いがなくなる。だから我々(YKK)は反対した。実際、小選挙区制になって以降、個人の力ではなく、政党の力で当選する時代になり、リーダーの力が強くなって総無力化してしまった」
山崎が次に挙げたのが世襲の弊害。
「いわゆる2世、3世の時代になって、我々のような、俗に言う“党人派”がいなくなった。(世襲議員は)選挙の苦労もないし、逆境というものを経験していない」
──確かに、山崎さんのような叩き上げはめっきり減りました。いまは安倍首相も麻生副総理も3世、究極の世襲政治家です。
「しかも岸信介の孫、吉田茂の孫っていうのを売り物にしている。麻生なんて、選挙の出陣式の演説で『シモジモのみなさん、私が吉田茂の孫であります』って言ったらしいから」
そう言って大笑いした山崎が挙げた3つ目の政治劣化の要因それが「戦争経験世代の減少」であった。