制度を管轄する保健福祉部の窓口に確認したところ、「在日韓国人の方でしたら、規定により受給対象から除外されています。保育料支援の受給をご希望であれば、特別永住権を放棄すれば可能です」と説明があった。そう規定する意図は何かを尋ねると、「担当でないので答えられない」という。
法律事務所・同人の朴榮グァン弁護士はこう分析する。
「私は違憲だと考えます。保育料支援とは、保育所などに預けられる5歳までの国民すべてに支給されるものです。『国民』は韓国の憲法や戸籍法で規定されますが、韓国籍を有する者を意味するだけではありません。韓国に在住している人すべてを指し、そのなかには外国人も含まれると拡大解釈されることがよくあります。ところがこの件は、拡大解釈ではなく縮小解釈です。
それに、韓国は日本と同じように血統主義で国籍を認めます。この件では、両親は韓国人ですから、日本の特別永住権を持っているからといって、国民から除外することはできないはず。その意味で、在日だけをあえて蚊帳の外に置こうとしているように見えます」
韓国人と外国人のあいだに生まれた子供(「多文化家庭」と呼ばれる)に支給されるものが、在日韓国人に支給されないのはなぜか。朴氏は「財政上の理由ではないか」と推測する。その見立ては、在日=金持ち、多文化家庭=生活苦という韓国社会の一般的なイメージとも重なる。お金のある在日韓国人は後回しでよい、という理屈なのだろうか。
【PROFILE】藤原修平●1973年岩手県生まれ。韓国、中国東北部を中心に東アジア地域の取材を行う。2009年より韓国在住。
※SAPIO2016年11月号