「手術の翌日から、回復するために立ったり歩いたりしなきゃいけなかったんだけど、スパゲッティみたいに体にチューブが9本もついている状態だから、常に家族がついてないといけない。だけどやっぱり、親の衰えている姿を見るのってすごくつらいんです。昔はもっとこうだったのに、とか思い出すと悔しいし、会話がかみ合わないとイライラしてきちゃって…」(アンナ)
さらに、辰夫が78才という高齢で手術を受けたということもあり、手術直後は、「せん妄」という幻覚や錯覚が見られる意識障害が起きた。
「病室に入ると、父が私の顔を見て『さっきオバマ大統領が来た』って言うの。私、“ボケちゃった”と思って、そのときは泣いた。先生は『1週間くらいで治っていくので大丈夫だと思います。だけどまれに、そのまま認知症になる場合もある』っておっしゃるから、その1週間はずっと祈るような気持ちでした」
退院しても治療は終わりではない。治療後少なくとも5年は、定期的に検査に行くように指示される。つまり、術後数年は再発のリスクと隣り合わせなのだ。先行きの不安から患者本人は精神的にも不安定になってしまう。そして、それを支える家族にも負担がかかる。
※女性セブン2016年10月27日号