でも、最初はドクターカーといっても誰もわかろうとしない。理解してもらうのは大変でした。それでも諦めずに構想を話していたら、それなら市議会で説明してくれ、って。市議会では、“市民1人当たり1日1円50銭から80銭の負担で、それまで救えなかった命が救えるんです”とプレゼンしたら、最後は満場の拍手! ぼくは、口車に乗せるのは上手なんですよ(笑い)」
こうして運営が開始されたドクターカーは、中津川市民病院 病院前救急診療科に所属し、専用駐車場と目と鼻の先に一室を構えている。病院前救急診療科という呼称は、病院へ行く前段階、「プレホスピタル」からだ。
間渕さんと医師の松本卓也さん(45才)が交代で、9日勤務5日休みというローテーションをこなす。ともにこの担当の間は24時間勤務なので、通常の勤務時間8時30分から17時までは病院に、それ以外の時間は借り上げ宿舎(待機宿舎)で待機、宿舎との往復もドクターカーによる。
他に看護師の高橋さやかさん(34才)や比嘉徹さん(37才)、鈴木晴敬さん(38才)、この10月からは林佑磨さん(31才)が加わり6人体制で平日の昼間はともに動く。6人とも緊急車両を運転する技能および無線技士の資格を有している。
昼食時にもすぐ対応できるよう、この車で出かける。ドクターカーの走行軌跡は、消防署や病院のパソコンのモニターに逐一報告されるので、「プライバシーなんかまったくないよ」という状態だ。
このドクターカーの活躍は目覚ましく、2014年3月の本運用から同年12月までに270件の出動要請があり、ドクターカー運用以後、救急救命率が3%から19%に引き上げられている。この数値はいたるところに救急指定病院がある都市部に匹敵する。ドクターカーって?と言っていた市民の意識も大きく変わった。
撮影■浅野剛
※女性セブン2016年10月27日号