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ハイヒール・リンゴが大学院で観察した男子学生の様子

 漫才師のハイヒール・リンゴ(55才)は、「もう一度学び直したい!」と2010年に大阪学院大学大学院商学研究科の聴講生になった。

「30年以上前に私が大学に通っていたときと、今の学生さんは、ちょっとどうかなって思うこともある。私らのときも、スキーサークルの合宿とかありましたけど、純粋にスキーを楽しんでましたよ。もちろんそこで男女がつきあい出すことはありましたけど、ヤリサーとかそんな言葉はなかったですよね。

 今は、周りが行くからといってとりあえず大学に行ってる人も多いでしょ? 目標がないから、それは、楽しい方に走りますよね。私の時は、それなりの理由がないと、なかなか大学には行かせてもらえなかったですよ」(リンゴ・以下「」内同)

 リンゴが大学院で気づいたことは、男はひとりで行動できずに群れているということだった。

「昔は“群れる”といえば、トイレに連れ立つ女子のことを言ってたのに、今は男子もそうなってる。極論すれば、ゼミを選ぶのも、自分が入りたいゼミじゃなく、○○と入る、みたいな。ひとりで決められないのか、自分に自信がないのか。

 男女関係でもおつきあいしてくのが面倒くさいとか、もし断られたらどうしようって思うから告白しない。そういう草食男子が何人も集まると、女子を襲ってしまったりするのかなって気もします。だってほんまに自信あったら、つきあえばいいんやから。そういうことができないと思うと、全体的に男子学生は弱っていますよね。生殖能力も含めて、全部」(リンゴ)

 これには、若者たちが恋愛をコスパで考えるようになった背景もある。精神科医の片田珠美さんが説明する。

「これまでは恋愛するにもセックスするにも、互いにいろんな手続きを踏んできた。男側からいえば、気に入った女性がいれば何とか口説いて一緒に食事に行くなど、さまざまな駆け引きをして、時にけんかをしながら、互いの合意があって初めてセックスに至る。でもね、今の人たちは、全部コスパ。自分が費やした時間、労力、お金に対してどれだけの見返りがあるかが重要なんです」

 1998年生まれ――順当に歩んでいれば、現在大学1年生だ。この1998年は日本で初めて年間の自殺者が3万人を超えた年。当時何があったかといえば、前年の1997年に、バブル崩壊後の不景気の中で山一証券が破綻した。その後、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行が続けて経営破綻。終身雇用や年功序列を信じていたサラリーマンが次々にリストラされた。

 今の大学生たちは、そういった社会がものすごく傷ついたなかで、安泰なんて言葉はないと心に刻まれ育った。そのなかで学歴だけが将来の自分を保証する唯一確かなもの、と親たちは思い、子供たちもそれを信じた。

 そしてできるだけ早く結婚したいと思っている。「結婚は墓場」なんてイメージは今やなくなり、25~29才の男性で、「1年以内に結婚したい」という人の割合は右肩上がり。またある調査では、2017年に卒業する女子学生に、「将来の未来像」を聞くと、「愛する人と結婚して子供ができ幸せに暮らす」と答えた人は40%を超え、ダントツの1位となっている。

※女性セブン2016年11月10日号

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