──しばらく前、人工知能の「アルファ碁」が世界的な囲碁のトッププロと対戦して勝ち越しました。
清原:あのおかげで、何でも人間以上にできるとばかりに、AIの能力が過大評価されたと思います。イメージ的に言えば、株の運用というのは、碁のように線と線の交点にだけ石を置く単純な世界ではなく、交点から外れたところや碁盤の上部の空間にも石を置く世界で、複雑さのレベルが違います。
──東京証券取引所でも2010年から、コンピュータによる超高速の株式売買システム(アローヘッド)が導入されていますが。
清原:コンピュータが人間より有利なのは、基本的には短期のスプレッド取引(価格差、金利差を利用した裁定取引=鞘取り)です。それはスピード勝負ですから。しかし、AIが長期の運用に向いているとは思いません。
──運用に勝負度胸は必要ですか。AIが人間に取って代わったとき、その問題はどうなりますか。
清原:客観的に見て勝つ確率の高い運用なら躊躇する必要はないはずですが、巨額の運用をするファンドマネージャーは誰しも恐怖心を抱いた経験があります。だから勝負度胸が必要なのですが、恐怖心を抱くことは人間の弱さであり、決断を躊躇すれば運用にとってマイナス。その点では余計なことは考えないAIの方が有利ですよ。
しかし、恐怖心がプラスに働くことがないわけではない。運用を踏み止まった結果、大損せずにすむ場合もあるわけですから。反対に、恐怖心を抱かないコンピュータはそのまま運用を続け、どこかで大損する、といったことがあり得ます。