2016年末のプーチン大統領の訪日を控え、北方領土交渉をめぐり、ある大物キーマンが浮上した。北方領土の見返りとしてロシア側がこだわっている事業が、日露両国に加え、中国・韓国の4か国を繋ぐ電力網構想だ。
ロシア側の関心の強さは、去る9月3日にウラジオストクで開催された国際間投資を活発化するための国際会議「東方経済フォーラム」における、プーチン大統領のスピーチにはっきり現われている。
「ロシア、日本、韓国、中国を結ぶエネルギー網構築に対する各国企業のイニシアチブを支持する。そのパートナーたちにロシアは競争力を持った電力料金を提示し、長期にわたってその金額を固定化する用意がある」
安倍晋三・首相や韓国の朴槿恵・大統領らを前にそう述べたことで、「ロシアはこの電力網構想を最大の投資案件と考えている」(経産省中堅)と受け止められた。では、プーチン氏はなぜそのアイデアを領土交渉の条件として提示したのか──。それを解く資料を本誌は入手した。資料はA4判で15枚。すべて英語で、1枚目には東アジアの地図とともに「Asia Super Grid Concept(アジアスーパーグリッド構想)」と書かれている。
これがプーチン氏の電力網構想の下地となるプロジェクトの名前だ。作成者は「ソフトバンクグループ」、4枚目には同グループの孫正義社長と、ロシア最大の送電会社「ロスセーチー」のブダルギン社長の顔写真が載っている。
実はプーチン氏にとって、孫氏のプロジェクトは渡りに船だった。ロシアは経済的に苦境に立たされている。