コンサート後、さだが立ち上げた「風に立つライオン基金」から義援金が南富良野町に贈られた


「こんなふうに考えることがあるんです。『精霊流し』とか『防人の詩』とか、僕は幸運にもヒット曲に恵まれて有名になった。でも有名になったのは、こうやって皆に喜んでもらうためなんじゃないか。肩を落とした皆さんの前で歌うことは、僕に課せられた大事な仕事なんじゃないか、と」

 事実さだは、国内外の僻地医療や大規模災害の復旧現場などで、ボランティア活動をする個人や団体に対し、目に見える何らかの援助ができないかと、「一般財団法人 風に立つライオン基金」を昨夏、立ち上げた(鎌田實氏は、同基金の評議員を務めている)。

「これには、いくつかのきっかけがあるんです。2011年1月に南九州の新燃岳(しんもえだけ)が噴火し、何千人もの方が避難を余儀なくされました。何かできることはないかと、急遽、コンサート会場などに募金箱を設置したんですが、わずかの間に250万円を超える額が集まりました。

 それを4月になって、都城市の市長さんに手渡したんですが、その場ですぐに『避難施設の空調に活用します』と明言された。『ああ、自分たちの寄付したお金の使い道がわかるっていいな』と思ったんです。だったら、そういう仕組みを作ろうと、このプラットフォームを立ち上げたんです」

 風に立つライオン基金の誕生だ。

「仲間からは、『遅すぎだ!』と叱られました。『もっと早く立ち上げていれば、東日本大震災でも力になれたはずなのに』と。でも仕方なかったんです。映画制作等で背負った28億円の借金を返し終わっていなかったので、寄付を借金返済に回すのではと邪推されてしまう(笑い)。ようやく30年かけて返し終わったので、基金を立ち上げることができました。返済をどうやって? ソロになって40年。その間、4000回以上コンサートしてきましたもん」

●さだ・まさし/長崎市生まれ。フォークデュオ・グレープを経てソロ歌手に。『関白宣言』などのヒットを飛ばす。小説に『かすてぃら』『風に立つライオン』など。今年11月に永六輔の作品を歌い継ぐCDアルバム『永縁~さだまさし 永六輔を歌う~』をリリースした。永六輔の「好奇心」「行動力」「人脈」「仕事」の秘密を聞き出した、新刊『笑って、泣いて、考えて。 永六輔の尽きない話』が発売中。

●撮影/江森康之 文/角山祥道

※週刊ポスト2016年12月9日号

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