ライフ

91歳の桂米丸 「新作落語は100本作って1本残ればいいほう」

91歳の落語家・桂米丸

 長生きは本当に「めでたい」ことなのか。歳を重ねれば体の不調や気力の落ち込みを実感することも増える。各界で活躍を続ける90代は、自らの“老い”とどう向き合い、折り合いをつけているのか──。

 落語芸術協会の最高顧問である桂米丸(91)は東京・中野の自宅から地下鉄に乗って新宿の寄席・末廣亭の近くまでやってきた。弊誌・週刊ポストを手に取ると、若い頃と変わらぬツヤのある甲高い声で、「年寄りにはちょっと刺激が強いね」と笑った。米丸が「90歳」を語った。

 * * *
 80歳になる直前に心筋梗塞が見つかり、「このままだと1か月持たない」と医者にいわれたね。それ以来、こっち(酒をあおる仕草をしながら)をきっぱりやめて、1日3食しっかり取っているけど、90歳になる時は黄疸になった。歳を取ると五臓六腑のどこかが悪くなるんだよ。

 それでも、ここまで落語を続けられたのは師匠(5代目古今亭今輔)から「古典は上手な人が多いから、新作落語をやりなさい」と教えられたからです。師匠は自分の新作の十八番をどんどん弟子に教えて、他の師匠から「自分がやる噺がなくなるぞ」と心配されても、「いいよ。また十八番を作るから」と返す方で、ものすごいエネルギーと自信の持ち主だったね。

 そんな師匠の教えを守り、今でも新作を作ってますよ。古典は覚えたものをずっと先まで使えて、やればやるほど上手になるけど、未完成の状態で披露して客の反応を見て内容を変えていく新作はそうはいかない。生活様式や社会はどんどん変わっていくので、新作は100本作って1本残ればいいほうです。

 ウケる奇抜な話を作っても、すぐに現実が追いついてきちゃうのが悩みだね。鼓膜に穴が空いた人が、“細胞が再生して障子みたいに張り替えられたらいいのに”と話すネタを作ったら、医学が進んで実現しちゃった。車が自動運転になるネタや、大阪では関西弁のナビが活躍するというネタも現実になった。新作はそんなことの繰り返しだよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン