ビジネス

大倉喜八郎 角栄に重なる「死の商人」の成り上がり人生

大倉喜八郎の生涯とは(東京経済大学のHPより)

 戦前の大富豪たちは、今では考えられないほどのスケールでカネを稼ぎ、そして使いまくっていた。彼らは、世界と伍していくために邁進していく戦前の日本の映し鏡でもあった。歴史に造詣の深いライフネット生命会長・出口治明氏が監修、忘れられた大物実業家たちの軌跡を辿る。

 * * *
 死の商人──鉄砲商として身を立て、財を成した大倉喜八郎の異名である。1837年、現在の新潟県新発田市生まれ。若くして江戸に出た喜八郎は「大倉屋」という乾物屋を営んでいた。

 時は幕末。ビジネスチャンスとみた彼は乾物店から鉄砲商へと転身をはかる。戊辰戦争で名前を売り、台湾出兵、日清戦争、日露戦争……と軍の御用商人としての地位を確立。一代で大倉財閥を築き上げる。

「死の商人というと負の部分だけが強調されて、大倉喜八郎という人物が見えなくなってしまう。“政商”という言葉の方が適切に彼を表わしているのではないでしょうか」

 そう語るのは、滋賀県立大学の准教授として異文化交流史の教鞭を執る中国・内モンゴル出身のボルジギン・ブレンサインさんだ。

 政商・喜八郎を代表する事業が、元勲・井上馨の要請で手がけた鹿鳴館の建設である。その後も井上の頼みで、帝国ホテルと帝国劇場も建てている。伊藤博文や後藤新平らは、要人との密会に東京・向島にあった喜八郎の別荘を使っていた。大物政治家との親密ぶりは、まさに“政商”と呼ぶにふさわしい。

 喜八郎の財を頼ったのは日本の政治家だけではない。ブレンサインさんは言う。

「中国の清朝末期、モンゴルの王公たちに大金を貸していたんです。そうやって大陸での大倉財閥の影響力を強めていきました」

 なかでも知られるのが「粛親王借款」である。日本政府から粛親王(*)への政治資金150万円の借款を肩代わりしたのが、大倉財閥だった。現在の価値で数十億円にも相当する。

【*清の皇族の称号。第10代粛親王の愛新覚羅善耆(あいしんかぐら・ぜんき)は、大倉喜八郎の資金援助で満蒙独立運動を率いた】

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン