あの手この手の不正受給。こうした悪弊を断つため、大阪市は2012年に「不正受給調査専任チーム」を立ち上げた。大阪市福祉局生活福祉課の担当者が説明する。
「大阪市では18人に1人が生活保護を受給しており、市民の理解と協力がなければ制度が成り立ちません。そこで担当係長に警察OBと嘱託職員を加えて94人から成る専属チームを立ち上げ、各区に3~6人を配置しました。受給者の収入や資産、虚偽申告などの重点調査を行います。悪質なケースは地元警察と協力して刑事告訴することもあります」
最も効果のある調査方法は、「税務調査」だという。小田原市と違って、怪しいとにらんだら適宜行っていく。
「受給しながら働いているかたが収入をごまかしたりゼロにするケースがとても多い。税務調査で収入を把握して、問いただしてもシラを切るなら日中に自宅を訪問し、不在だったら『どこに行っていたのか』と問い詰める。近隣住民から『スナックで働いているよ』などの通報があって職場がわかれば、押しかけて質問を繰り返して事実を認めさせて、正確な収入を再申告してもらいます」(前出・大阪市の担当者)
大阪市の2014年度の不正調査件数は1593件で、うち保護停止・廃止および申請却下が330件、不正受給と認定して返還を求めたのが157件だった。着実に成果は出ているが、なかには事実確認が難しい案件もある。
「離婚率が全国でも上位の大阪では、夫婦が意図的に世帯を別にして、奥さんだけ生活保護を請求するケースが多い。別れたはずの夫が家にいる場合、家庭訪問で見つけても『たまたま子供の顔が見たくて来たんや』と言われると対処が難しい。その場合は本人や夫の事情聴取に加え、近所や地区の民生委員に確認します」(前出・大阪市の担当者)
連日、途方もないイタチごっこが続いているのだ。
◆働けるのに働かない人たち
不正受給以上に根が深い問題は、「働けるのに働かない人」たちの存在だ。厚労省は生活保護の被保護世帯を「高齢者」「母子」「障害・傷病者」「その他」に4分類するが、近年、「その他」の世帯が急増している。
『生活“過”保護クライシス それでも働かない人々』の著者で現役CWの松下美希さんは、「近年、制度を利用して楽に収入を得ようという人が増えている」と指摘する。