また、トランプ大統領は、かつてロシアの高級ホテルに滞在した際に売春婦と変態的な行為に及んだり、ロシアでの事業の失敗をオリガーク(新興財閥)に救済してもらったりしたスキャンダルをロシア政府に握られているとも報じられている。さらには、トランプ大統領がロシアに対する経済制裁を解除すれば、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチがトランプ大統領に大枚を献上するという密約がある、といった噂もネットでは流れている。
それらの真偽は不明だが、実際に世界中でファミリービジネスを展開している以上、アメリカ大統領として利益相反が起きる恐れは大いにある。
極右メディアの会長だったスティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問に、見識がなく相互に脈絡のとれていない大統領令を次々と執筆させ、テレビカメラの前でサインするだけの“司会者(MC)トランプ”は、そう長くもたないだろう。
今後はアメリカ国民が、トランプのような幼稚なレトリックを多用したアジテーション(大衆煽動)に惑わされず、常に「真実は何か」を追求するようになってくれることを期待しよう。またアメリカの苦い経験が、国民感情に訴求するだけのポピュリズムがヨーロッパに急拡大するのを防ぐ役割を果たすことを祈りたい。
一方、トランプ大統領が4年の任期を全うできずに頓挫した場合には(存在感ゼロではあるが)これまた極右原理主義者のマイク・ペンス副大統領にその職を譲ることになる。安倍晋三首相はそういう事態になることも想定しながら、貿易や安全保障などについて手持ちのカードを前のめりに全部出してしまわないよう、老獪に交渉すべきである。
※週刊ポスト2017年2月24日号