国内

今上天皇 退位後は京都にお戻りいただこうとの提案も

退位後は「京都にお戻りいただく」案も

 明治天皇が京都の御所から江戸城(現在の皇居)に居を移したのは、元号が慶応から明治に変わった際のことだ。1868年9月に元号が変わると、間もなく天皇は東京に向けて行幸に出発。東京に着いた翌10月に江戸城を東京城と改め、いったん京都に戻ってから翌1869年3月に改めて東京に入った。

 自民党は2月13日、天皇の「一代限り」の退位を認め、特例法で対応すべきとの見解をまとめた。つまり、今上天皇の「生前退位」である。野党との協議次第で、2年後には皇太子の即位が実現し、皇居の主が入れ替わる。

 退位後の呼称を「上皇」とするか「前天皇」とするか、といった点に注目が集まりがちだが、「皇室の歴史を踏まえた根幹の議論が抜け落ちている」と指摘するのは、民族派団体「一水会」の木村三浩・代表だ。

「125代続く皇室は、明治以前から日本人にとって大切な役割を果たしてこられた。伝統と文化の中心である京都で長きにわたり、国安かれ、民安かれと祈り続けてこられたのです」

 今上天皇は先の大戦への反省から戦没者慰霊を重んじ、大規模災害があれば被災地を慰問して復興を祈ってきた。国民の安寧を願い続けてきたその役割を踏まえ、木村氏はこう提起する。

「拠点が東京のままでは『新天皇との間で権威が二重になる』という議論も浮上しかねない。そうした論争に巻き込まれないために、150年ぶりに京都にお戻りいただくことが望ましいのではないか」

 確かに京都御所には、明治天皇が一時期生活していた若宮・姫宮御殿のように様々な歴史を重ねてきた住まいがある。御所を中心に広がる京都御苑は、かつて公家の邸宅などが立ち並んだ場所で、現在も迎賓館がある。

「京都は皇室にとって“父祖の地”です」と強調するのは宮中祭祀に詳しい国際日本文化研究センターの山折哲雄・名誉教授だ。

「京都には天皇の御座所として、平安遷都(794年)から明治維新まで1074年の歴史があります。歴代の天皇は、平安や江戸のような平穏な時代ばかりでなく、応仁の乱や南北朝のような動乱期もくぐり抜けてきた。試練から学びながら、絶えず安定的な天皇制のあり方を求めてきたのです。

 その舞台であり続けた京都には各時代を象徴するような遺跡や伝承が残されている。退位後にそうした歴史を持つ場所に移られるのは、自然な流れではないでしょうか」

写真■日本雑誌協会代表取材

※週刊ポスト2017年3月3日号

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン