財団法人ハイライフ研究所の調査から、団塊世代の人口移動を見ると、昭和40年代(団塊15~19歳)に東京大都市圏で団塊人口が膨れ上がっている。昭和40年には東京で47.3%増、神奈川で37.6%増で、さらに昭和45年には埼玉、千葉でも団塊世代が増加し、首都圏には全国の団塊世代(20~24歳)の29%が集中している。

 団塊世代が30歳前後になり、結婚し、世帯を持ち始める昭和55年ごろになると、東京区部や横浜市、さらに川崎、武蔵野、三鷹、多摩で団塊世代が減少し、我孫子、柏、八千代、春日部、所沢、越谷、相模原など、東京30km圏域の新興住宅地で増加する。

 さらに、40歳代になると、団塊人口は横浜、松戸、千葉、市川、船橋、武蔵野などから、八王子、川越、大宮、浦和、町田、柏、川越、所沢へ移動。さらに、40kmを超える佐倉、東金、蓮田、東松山、加須、鴻巣などで団塊人口が急増している。

 つまり、若い頃に地方から東京へ大量流入し、年を経るごとに、30km圏、40km圏へと追いやられてきたのである。

 誰が一番早く家を買うかで、友人や同僚と争うようにして郊外のニュータウンや新興住宅地で家を買い求めたのは当人たちの“自己責任”とはいえ、今や高齢化と人口減少で空き家がどんどん増え、ゴーストタウン化の危機に瀕している。引っ越そうにも家が売れないから、古くなった家にしがみつくしかないのである。

 それでも下の世代は、「給料にしても年金にしても、俺たちより恵まれているじゃないか」と言うかもしれない。しかし、団塊世代は下の世代に比べ、教育を受ける機会すら与えられなかった。

 団塊世代が高校受験した昭和37年の高校進学率は64%、大学受験をした昭和40年の大学進学率は17%である。これが10歳下になると、昭和47年の高校進学率は87.2%、昭和50年の大学進学率に至っては38.4%と4割近くに達している。そして今や、大学全入時代である。

 親から教育でカネをかけられた下の世代と、いきなり社会に放り出されひたすら働かされてきた団塊世代を一律に比較できるだろうか。そうして働き続けた後にようやく迎えた老後で、年金は減り、負担は増える。

 それどころか、団塊世代が70歳を迎えようとした途端、「高齢者の定義は75歳から」(日本老年学会が提唱)という議論が起こるのである。

※週刊ポスト2017年3月3日号

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