「珠莉は泣き声を上げず、大粒の涙をポロポロと流し、その日から“どうして?”と聞くことはなくなりました」
しかし、姿は見えなくても、珠莉ちゃんはお姉ちゃんといつも一緒にいた。震災から1か月、2011年4月15日、石原軍団が開催した炊き出しで上戸彩(31才)から焼きそばを受け取るときもそうだった。
「珠莉は上戸さんに“お姉ちゃんの分もください”と言ったんです。“えっ?”という顔をされたので、事情を説明しました。すると珠莉を抱え上げて、ぎゅーっと抱きしめてくださったんです。幼くて上戸さんのことがわからない珠莉は、キョトンとしていました。私はただ、抱きしめてくれたことがうれしかった」
大好きなお姉ちゃんに会いたい――2011年からずっと、クリスマスにする、サンタさんへのお願いは同じだった。
「お姉ちゃんが帰ってきますように」
◆たくさんのサンタが姉妹の夢を叶えた
そんな珠莉ちゃんは、2014年8月に放送された『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)の中の『人形の旅』に夢中になる。
「関ジャニ∞の安田章大さんがパーソナリティーで、病気で海外に行けない少女の代わりに、少女にそっくりな人形をハワイなどに連れて行き、写真や動画を撮影するというコーナーでした。珠莉は食い入るように見ていて、“これをお姉ちゃんにやってあげたい”と言ったんです」
その冬、珠莉ちゃんはサンタさんに「私たちの人形が欲しい」とお願いした。『人形の旅』を覚えていたのだ。そして2015年の冬は、プレゼントの人形を手に、「サンタさんと一緒に世界中を旅行させてほしい」と手紙を書いた。
「もともと前年に、珠莉にあげた人形もボランティアで作っていただいたもの。最初は、“珠莉、なんてことをお願いするの。そんなことできるわけない”と頭を抱えました」
しかし、それを聞いた『河北新報』の記者が記事にしたのをきっかけに、事態は大きく動き出した。
「愛梨のことや珠莉の思いが書かれた記事を見て、個人のかたや被災地支援のNPOが『河北新報』さんを通して連絡をくださり、珠莉の夢を叶えようと動き出してくださったんです。とってもありがたくてうれしかったんですけど申し訳ない思いもありました。思いのこもった人形だし意外と大きいので、旅行中は気を使うでしょうし、写真を撮るのも負担になる。旅行を楽しめないのではという思いもありました。だけどみなさん、すごく楽しかったとおっしゃってくださいました」
1年間で25組の協力者が現れ、人形は20か国を旅することになった。その写真集は、2016年のクリスマスに珠莉ちゃんにプレゼントされた。