過去を振り返ると、2011年の『カーネーション』では、ヒロイン・小原糸子の60歳までを尾野真千子さんが演じ、72~92歳を夏木マリさんが演じました。「残り放送期間が1か月を切った段階でヒロインが変わって物議を醸した」ことを覚えている朝ドラファンは多いでしょう。さらに過去を振り返ると、1983年の『おしん』では田中裕子さんから乙羽信子さんに、1999年の『すずらん』では遠野凪子さんから倍賞千恵子さんにヒロインをバトンタッチしました。
長い歴史の中でもヒロインのバトンタッチが少ないのは、「視聴者が主演女優に愛着を持っている」から。『べっぴんさん』も芳根さんから他の誰かに代わっていたら否定的な声が殺到していたかもしれないだけに、今回のチャレンジは正解なのかもしれません。
今年4月スタートの『ひよっこ』は、東京オリンピックが開催された1964年からはじまる物語。ヒロインの谷田部みね子を演じるのは24歳の有村架純さんであり、“戦争前後を含む女性の一代記”ではないため、加齢に対する不安はありません。
一方、今年秋スタートの『わろてんか』は、“戦争前後を含む女性の一代記”であり、現在18歳の葵わかなさんがヒロインの10代から50歳前後を演じることが予定されています。『べっぴんさん』と似た形だけに、再び加齢の問題と向き合うことになるでしょう。
今後の朝ドラを占う意味も含め、芳根さんがどんなおばあちゃん姿を見せるのか。残り2週間の演技に注目してみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。